2024年 8月13日
図書でつなぐ大震災の記憶

神戸「あのね、その本はね... ズッコケ三人組とよしおか文庫」 7月3~11日(全7回)

 神戸市立福池小の学校図書館には「よしおか文庫」と呼ばれる詩集20冊が置かれている。阪神・淡路大震災で亡くなった同校の教諭・吉岡千恵美さん(当時26)の名を冠し、千恵美さんの義母が2013年に寄贈した。また、震災関連図書として人気児童書「ズッコケ三人組」シリーズの一作「ズッコケ脅威の大震災」も並ぶ。物語中に、震災を経験した福池小の児童が出てくる。いずれの図書も保護者や学校司書が、大切に受け継いできた。

 デジタル推進局プロジェクト編集部の黒川裕生記者は、福池小で保護者として図書ボランティアグループに参加する妻に背中を押され、同校の学校司書に話を聞いた。間もなく異動になりそうだった司書は、自身が離れた後も継承がされるかどうかについて危機感を持っていた。

 よしおか文庫の存在や、「ズッコケ三人組」に福池小が登場していることを、自身も知らなかった黒川氏。教諭が異動で入れ替わる中、震災の記憶や体験は思っているほど継承されていないのかもしれない――。記事により「記憶にくさびを打ち込む」との狙いで、継承に関わってきた人々の思いを伝えた。

 よしおか文庫が、千恵美さんの生きた証しとして「形に残るものを贈りたい」との義母の考えから生まれたこと、千恵美さんと同じ26歳で亡くなった金子みすゞの詩集が選ばれたことなどを紹介。「ズッコケ脅威の大震災」を巡っては、21年に亡くなった作家の那須正幹さんと児童の手紙のやり取りが契機だったことを報じた。

 黒川氏は、図書を受け継いできたボランティアグループの保護者を含め、連載に登場する誰かが欠けていれば、継承はどこかで途切れていたとみる。司書らから受け取った思いを受けたこの連載も、記憶をつなぐ役割の一端を担えたとの感触を持っている。遺族や犠牲者に話を聞くことにとどまらない震災報道の在り方を今後も探りたいと語った。(斎)

 ※連載はこちらでご覧いただけます。(他社サイトに移動します)

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