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2024年 12月10日
関心喚起へ ポーランドで取材
信濃毎日「かすむ平和 ウクライナ避難民の日常から」 10月3~7日(全5回)
ロシアによるウクライナ侵攻から2年9か月が過ぎた。隣国ポーランドに避難した人々は、ほとんどが子供や母親、高齢者。ウクライナより物価が高いポーランドで不安定な生活を送る。人々の支えの一つが、各国から集まる寄付金だ。しかし、年月の経過と戦況の膠着などを背景に、人々の関心は低下。現地で避難民を支援する信州ゆかりの人らに集まる寄付額も激減しているという。
報道部の岩安良祐記者が9月、ポーランドを訪問。侵攻当初は避難民と長野県民の交流や寄付の動きが盛り上がったものの、報道の量も減る中で関心の薄れを感じていた。避難民の現状を直接見て、伝えることが「関心を再び持ってもらうために必要だ」との思いで取材した。
連載では、戦争前に専門的な職業に就いていた避難民が言語の壁にぶつかり、収入の高い仕事を得るのが難しい問題を取り上げた。ポーランド南部クラクフ郊外の小学校で清掃員として働くスフィトラーナ・ダビデンコさん(63)は以前、薬剤師として働いていた。ポーランド語が分からず今の仕事にたどり着くまでに半年かかったこと、月給とウクライナの年金で、切り詰めた生活を送っていることなどを報じた。
地方紙の記者として、読者の生活に身近な報道に取り組んできた岩安記者。この連載でも「大きな理不尽さの中にあるミクロな暮らしの息遣いを伝える」ことを意識した。
避難民を支援する松本市の認定NPO法人の臨時スタッフにも現地で話を聞いた。子供たちに文具などを贈る様子を紹介。加えて、支援者らにも生活があることも焦点に据えた。臨時スタッフの宮永匡和さんの妻はポーランド人。隣国での戦争に恐怖を覚え「うそだ、逃げよう」と一時パニックに陥った。こうした状況下でも、人々の関心の低下を感じながら支援を続ける宮永さんらの姿は、読者の心にも響くのではないかと考えたと振り返る。(斎)
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