2024年 12月24日
施設存続 市民との結び付き鍵

河北 「人口減時代の美術館 東北の現場で 第1部・苦悩」 12月3~5日(全3回)

 岩手県花巻市の萬鉄五郎記念美術館は廃校になった小学校を2022年から収蔵庫として利用する。以前使っていた収蔵庫が老朽化により利用できなくなったため。廃校舎には作品管理に必要なエアコンがなく、除湿器やサーキュレーターを24時間稼働させてしのいでいる。

 人口減による利用者数の縮小に加え、地域財政の先細りで美術館の資金・税収の確保は厳しさを増す。文化部美術担当の会田正宣記者は7月に東北の美術館と博物館に向けてアンケートを実施した。ほぼ全ての館で企画展の費用や施設管理費、人件費に悩んでいるとの結果が出た。アンケートの回答を基に東北の美術館の抱える財政事情や存続の仕方について連載を始めた。

 萬鉄五郎記念美術館の平沢広館長は会田記者に「コストはぎりぎりに絞っている」と説明する。そこで館の力強い存在となっているのは地域住民らで作るボランティア。清掃や草刈り、行事運営や展示会場の監視スタッフまで担うこともある。会田記者はボランティアが作業に当たる姿を取材し、「身近な場所や風景を描いた作品が並ぶ地元の美術館は、地域の人々の誇りで愛されている存在」であることを感じたという。平沢館長は今後もコストを抑えながら館を運営し続けるには「市民との密接な関係が重要になる」と強調した。

 山形県鶴岡市の致道博物館は耐震補強工事の費用を賄うため、クラウドファンディング(CF)を実施。目標を上回る額が寄せられ、施設は無事にリニューアルした。学芸員の一人は「今までにない理解者が現れたことがCFの成果だった」と胸をなでおろす。その上で「輪を広げる運動をしなければいけない」と語った。会田記者は「館の活動や存在意義を市民に感じてもらわなければ生き残れないという危機感」を感じたと話す。今後は市民との関わりを増やす美術館の取り組みを紹介する予定だという。(阿)

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