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2025年 1月28日
生活困窮者 人ごとにしない
岐阜「ホームレスは、どこへ行った―岐阜の現場から 第4章」 12月12~17日(全6回)
公園や河原などで暮らす人の数を調べる厚生労働省の全国調査によると、岐阜県内の該当者は2024年1月時点で2人だった。最多は03年の86人で、それから年々減少。全国的に見ても減少傾向が続く。一方、住居がなくインターネットカフェや自家用車に泊まる人など潜在的なホームレス状態の人は含まれないため、支援者からは「実態を反映していない」との指摘がある。現に、岐阜市内の道の駅にも、車上生活者が夜ごと集まる。
昨年2月に第1章を掲載。以降、統合編集局報道部の山田俊介記者らが道の駅や炊き出しの会場、公園といった現場で取材。数字に表れにくくなった生活困窮の実態と、孤立対策の在り方を探ってきた。「すぐそばにある都会」として名古屋に焦点を当てた第4章では、同市の路上生活者の約6割が精神疾患や知的障害を抱えているとの調査結果に言及。貧困だけでない課題が絡み合っている実情も報じた。
生活困窮の当事者だけでなく、支援者の声を伝えることにも注力。高架下での炊き出しや夜回りに取り組む支援団体でリーダーを務める男性は、友人に誘われたのを契機に、20年近く活動に携わってきた。元から支援への関心があったわけではなく、当事者と話す中で「本当の大変さ」を知り「ご飯をあげて住まいにつなぐだけじゃ足りない」ことを理解した。周囲から当事者をやゆする言葉を言われたこともあるが、理解者が増えることを願いながら活動に取り組む姿を紹介した。
山田記者は「自分の生活を守るだけで精一杯という面もある社会の中で、自分とその周辺以外の人のために行動している人がいる」ことを強調。こうした支援者の姿を通じ「社会のあらゆる存在について、人ごとにせず目を向けてほしい」との思いが根本にある。
今後は岐阜に舞台を戻す予定。支援者同士をつなぐハブの役割を果たせる報道を意識したいと説明した。(斎)
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