2015年 7月7日
未来は若者政治参加が鍵

「大人の責任と覚悟」意識改革を

  選挙年齢を「20歳以上」から「18歳以上」に引き下げる改正公職選挙法が成立した。来年夏の参院選から、高校3年生の一部を含む18、19歳の約240万人が新たな有権者になる。1945年に20歳以上になって以来、70年ぶりの参政権拡大で意義は大きい。同時に民法・少年法上の年齢との問題や若者の「選挙離れ」など課題も多い。全国の多くの新聞が社説で取り上げ、さまざまな注文や提言を盛り込んでいる。
 

参政権拡大を歓迎

 「選挙権を18歳に認める国や地域は8割以上に上り、いまや『世界標準』。異論があろうはずはない」(河北)「有権者の裾野が広がるこの機をとらえ、民主主義社会の成熟につなげていくことが大切である」(山陽)「政治参加の間口を広げ、若い世代の声を政治により反映させる。大きな意義のある改革であり、歓迎したい」(朝日)など、総じて歓迎や期待の論調だった。

 その上で、多くの社説が懸念するのは、若者の政治への無関心や教育への中立性の問題だ。そこで、▽投票率アップ▽教育現場での政治的中立性▽民法の成人年齢や少年法の適用年齢との整合性―の3点に分け、読み比べた。

主権者教育の充実を

 最初の投票率アップについて、下野は、若い世代が「自らの1票の重みを実感できるか。各党は18歳と19歳を政治に導いた責任の重さを肝に銘じ問い直してほしい」と注文をつける。中日・東京は「選挙権年齢を引き下げたからといって投票率が向上する保証はどこにもない。鍵となるのは、いかに良質な『主権者教育』がなされるかである」と主張する。京都も「国や社会の問題を自らの問題と捉え、主体的に判断し、行動に結びつける能力を育むことを主権者教育の基軸としたい。高校での公民教育の充実をはじめ、小中学生から社会問題への関心や討論能力を高めたり、模擬投票などの経験を重ねることが欠かせない」。「政治参加を促すためには」と題した西日本は、模擬投票を体験した高校生の事例を示し「選挙の意義を実感できるような取り組みを続けていきたい」とし、「熟議の末に一致点を見いだす―。そんなお手本を国会でこそ示してもらいたい」と訴える。また、高校生を対象にした主権者教育を提言する日経は、政治にある程度は足を踏み入れざるを得ないとして「公約の読み比べや、それを踏まえた生徒同士の討論などはあってよい。特定の政治勢力を利することのないように気を配りつつ進めてほしい」と要望するなど、ほとんどが主権者教育の充実が不可欠とする論調だった。

生徒の自主性を尊重

 次に政治的中立性では、新潟は「中立性の確保は重要だが、トラブルを恐れて踏み込み不足になっていなかったか。それらを検証しながら、有効な政治教育を追求する必要がある」。神戸も「教育の政治的中立は、幅広い意見を分け隔てなく紹介し、自由に議論できる場があってこそ保たれる。政府は生徒の自主性を尊重する方向で指針を策定してもらいたい」と要求。読売は「文科省と日本教職員組合の対立の影響などから、学校教育で政治や時事問題に深入りするのはタブー視されてきた」と従来の状況を振り返り、「特定政党の価値観の押しつけを避けるためには、担当教師の研修や手引書の作成などが欠かせない」と今後の課題を指摘している。 

成人年齢の議論、本格化

 最後に、民法、少年法との年齢差の問題について、静岡は「飲酒、喫煙など身近な問題をはじめ、多くの法令が関与する。成人とは何歳がふさわしいか、考えるきっかけにしたい」と問題提起。読売は「親の同意なしでの商契約など、個別の規定ごとに、どんな課題があるのか、どう対策を講じるのかを検討すべきだ」として、一律に「18歳」にするのは乱暴としつつも「見直し作業を着実に進めることが重要」と結んでいる。毎日は成人年齢の引き下げをめぐる議論の本格化を予想し、18歳成人が「各国の大勢であり、選挙権年齢といずれ一致させていくのが自然だろう」とする。産経も「選挙権をもつ国民は成年と位置付けるのが自然である。少年法の適用年齢引き下げとともに、結論を早めに出すべきだ」と積極的な考え方を示した。

 それぞれ、政治に注文をつける論調が多い中、北海道は新たな有権者の側にも意識改革を促す。選挙権の獲得は「自分たちの未来を自分たちで決める力を手に入れることになる」と指摘、「『大人が決めたことだから』と不満を言っても通らない」として、「大人の責任と覚悟」を求めた。(審査室)

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