2017年 11月7日
政権の全面承認ではない

改憲は議論の積み上げを

 10月の衆院選は、自民・公明の与党が大勝し3分の2の議席を維持した。安倍首相は国政選挙で5連勝し、来秋の自民党総裁選での3選に足掛かりを築いた上で、引き続き政権を担う。一方、野党は立憲民主党が公示前の3倍以上の議席を得て躍進。希望の党は公示前議席を下回った。各紙は、世論調査の結果も踏まえ、政権への「白紙委任ではない」「全面承認ではない」と指摘、丁寧な政権運営を求める論調が多くを占めた。

批判票の受け皿分散

 与党の勝因として各紙がそろって挙げたのは、野党分裂による「敵失」だ。下野、上毛、日本海などは「野党の混乱は目に余るものだった。首相の解散表明直後に野党第一党の民進党が候補者を立てないことを決定。小池百合子東京都知事が率いる新党・希望の党への合流に動いた。ところが安全保障法制への見解の転換を迫る『選別』と『排除』によって民進党は分裂、過去の衆院選の反省から検討されていた野党候補の一本化が頓挫し、政権批判票の受け皿が分散してしまった」と指摘した。

 日経は小池百合子代表の「排除」発言自体は「政策を同じくする同志を集めようとするのは当然であり、そのことは批判しない」としつつ「しかし、分身的存在だった若狭勝氏らが進めていた新党づくりを『私がリセットします』と大見えを切ったのに、自らは出馬しなかった。これでは政権選択にならない。都知事選と都議選の連勝によって、自身の影響力を過大評価していたのではないか」と分析した。

 躍進した立憲民主党については秋田魁が「安全保障関連法は違憲と主張するなど理念を明確にし、安倍政権との対決姿勢を鮮明にしたことは、対立軸として分かりやすかったのだろう」と説明した。

 信任を得た形の安倍政権について北海道は、北朝鮮危機の中「安定を求める国民の思いが、現状維持という選択に表れた面はあるだろう」「選挙期間中の世論調査ではその多くで、安倍内閣を『支持しない』とする回答が『支持する』との回答を上回った」「選挙結果を『安倍1強』への信任とみなすことはできない。まして政権への白紙委任状ではない」と注文した。

 西日本も「総体として政治のリーダーシップや安定感を醸し出し、与党優位の基調となった。その一方で、今回の衆院選は『安倍政治』への疑念がじわじわと膨らんでいる現実もあぶり出した」「民意と選挙結果の間には〝乖離〟(かいり)があることを見据えるべきだろう」とした。

強い基盤生かせ

 今後の政策課題については、毎日が「首相の役割は特定のイデオロギーへの奉仕ではない。首相はおごることなく、恵まれた政治資源を国民のためにこそ活用すべきだ。国民生活にとって、今、最も優先されるべきは、少子高齢化と財政危機の下で社会保障制度を持続可能にしてゆくことだ」とし、社会保障と財政再建の「給付と負担のバランスの必要を説くことは、強い基盤を持つ政権だからこそ可能なはずだ」と指摘。河北はアベノミクスの軌道修正を求め、「東日本大震災の被災地をはじめ、取り残された地方は貧困と格差の加速が深刻になってきている。安倍首相はまず言葉通り、景気の実感が列島の隅々にまで届くように全力を傾注してほしい」とした。

 憲法改正について、朝日は「本紙の世論調査では、自民党が公約に記した9条への自衛隊明記に賛成は37%、反対は40%だった。短兵急な議論は民意の分断を深めかねない」と指摘、超党派による国会の憲法審査会での十分な議論の積み上げを求めた。

 読売は「自民、公明、希望、維新の各党は改正に前向きである。各党の合計議席が衆院の3分の2を大きく上回ったが、改正項目に関する足並みはそろっていない。自民党は今後、自衛隊の明記、緊急事態条項など4項目に関する党内論議を再開し、党の考え方をまとめる。各党も無為に議論を先送りせず、自らの見解を策定すべきだ」とした。

 産経は北朝鮮情勢を挙げて「憲法9条は自衛隊の手足をしばり、国民を守る手立てを妨げることに作用してきた」「安倍首相と自民党は、憲法改正という公約実現への努力を止めてはならない」と主張した。

 南日本は「絶対に譲れない一線がある。改憲自体が目的になってはならないということだ」「国の在り方がどう変わり、国民に何をもたらすのか。まずそうした問題設定を共有してから慎重に議論するのが憲法問題の本質だ」と論じた。

 また森友・加計問題については、中日・東京が「すべて解明されたわけではないし、選挙を経たからといって免責されるわけでもない。国会として引き続き解明に全力を挙げるのは当然だ。ましてや野党側がひるむ必要はまったくない」と喚起した。  (審査室)

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