2018年 3月6日
非核化協議の糸口探れ

日米韓の連携強化が重要

 韓国・平昌での冬季五輪に合わせて北朝鮮の最高指導者、金正恩氏の妹らが訪韓し、南北融和を狙った会談が行われた。南北の合同チームが同五輪に参加するなど内外への融和ムードの発信に躍起だが、対北朝鮮制裁が続く中で五輪の政治利用ではないかと、国際社会の受け止め方は冷ややか。日本の安倍首相は開会式出席に合わせて訪韓し、文在寅大統領との日韓首脳会談に臨んだ。従軍慰安婦問題の合意履行に関し両国関係はぎくしゃくしているが、北朝鮮の核・ミサイル問題への対処には、米国も含めた3か国の連携強化が欠かせない。五輪後の半島情勢をにらんで日韓関係をいかに改善し、北朝鮮への制裁と対話の可能性にどう対処していくべきか。平昌五輪に際し2月前半に各紙に掲載された社説を点検した。

政治利用に疑問

 北朝鮮の平昌五輪参加と代表団派遣について、毎日は「北朝鮮の狙いは結局、文政権に南北融和への期待を抱かせ、日米との距離を広げることだろう」と指摘。その上で「IOCや韓国政府には、五輪が北朝鮮を利する足場に使われぬよう開会中も十分な配慮を求めたい」と注文を付けた。朝日は「南北間での高位の対話が実現することは評価したい」「不毛な緊張状態を改善する意義を悟らせ、正恩氏に直接メッセージを届ける好機ととらえたい」と一定の評価を示す。一方で「南北対話を、米朝交渉の実現につなげることが肝要だ」と指摘。開会式に出席する安倍首相には「歓迎行事の際などでも接触を図り、核・ミサイル問題とともに、(日本と北朝鮮の)二国間の懸案を直接訴えるべきだ」と求めた。

 南北融和ムードの醸成に動く北朝鮮に対し読売は「北朝鮮への圧力を維持し、核・ミサイル問題を平和的に解決する糸口を探る機会としたい」と訴える。韓国政府に対しても「文氏は、北朝鮮側と会談する場合には、核・ミサイル開発の放棄を強く求めねばならない」と対処を求めた。デーリー東北、山口なども「南北関係の改善を、北朝鮮を非核化に向けた交渉に導くきっかけにしなければならない」と指摘。文大統領には「北朝鮮代表団に南北の和解だけでなく、北朝鮮が非核化の協議のテーブルに着くように強く働き掛けるべきだ」としている。

 五輪の政治利用との見方が根強い中で、信濃毎日は「女子アイスホッケーで南北が合同チームを組むことは、選手らの意向を踏まえたものではない」と指摘。その上で「IOCは北朝鮮の大会参加をもろ手を挙げて受け入れ、本来、出場資格がない選手を特例で認めた。スポーツの根幹に置くべき公正さを顧みない政治判断である」と批判した。北朝鮮が平壌で人民軍創設記念日の軍事パレードを実施したことについて、中日・東京は「五輪直前に、すぐ近くで軍事力を誇示する行動に出るのは、適切でない。北朝鮮へ不信感を増幅させる、『マイナス効果』しかないことを知るべきだ」と指摘している。

慰安婦合意 再び軌道に

 五輪の開会式に先立ち、安倍首相が文大統領と会談するなど、日米韓3か国はそれぞれ首脳級会談を行った。これについて産経は「日米韓が北朝鮮と向き合う基本姿勢と結束の重要性を確認できた」と評価。併せて「とりわけ、南北融和に大きく傾斜する文氏には、日韓、米韓会談で表明した対北圧力を約束通り進めることを求めたい」と注文を付けた。

 五輪後を見据えた取り組みについて静岡は「融和姿勢を醸し出す裏で、北朝鮮が核・ミサイル開発を加速させることは許してはならない」とクギを刺す。「北朝鮮による五輪の政治利用が際立つだけに五輪後を見据えた日米韓の連携強化が一層重要になることは言うまでもない」と強調した。

 日経は「北朝鮮の核問題で日米韓が緊密に連携していくためにも、日韓の意思疎通が欠かせない」と指摘。歴史問題を巡る両国の対立の根は深いが、「今後も首脳対話を重ねて日本の立場を粘り強く説明し、溝を埋める努力を地道に続けていくしかあるまい」としている。北海道は「従軍慰安婦問題を巡る日韓合意は、今後の対北連携を進める上でも両国関係の基盤になるものだ」と指摘。その上で「対話を重ねる中で、合意を再び軌道に乗せる道筋を探るべきだ」と、日韓の相互理解に向けた一段の努力を求めた。

 神戸は「日米韓の足並みの乱れは、北朝鮮を利することにつながりかねない。北朝鮮の核・ミサイル開発放棄に向け、3か国が結束する姿を引き続き見せる必要がある」と強調する。また、日本の役割について中国は「米国も巻き込んで対話の機運を醸成することこそ、平和外交を旨とする日本の使命だろう」と指摘。「軍事衝突という結末にならないよう、関係国は外交努力を尽くさねばならない」と訴えている。(審査室)

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