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2018年 10月2日
「謙虚な政治」求める
経済再生、社会保障改革が責務
自民党総裁選は安倍晋三首相が石破茂元幹事長を破り、連続3選を果たした。総裁任期は2021年9月までで、通算の首相在職日数は歴代最長が視野に入る。各紙は安倍政治の総決算となる3年間へ向け「謙虚な政治」を求め、経済再生や社会保障政策などに取り組むよう訴えた。
森友・加計問題の解明を
選挙は首相が国会議員票の8割を得た一方、党員票は石破氏が45%を獲得した。中日・東京は、党員は「一般の有権者と同じように暮らし、働いている分、国会議員に比べて、国民により近い立場にある」「石破氏が予想以上の党員票を得たことは、国民が安倍政権に厳しい目を向けていることの表れ」と分析。
毎日も「石破茂氏の得票が予想を上回ったのは『正直、公正』のキャッチフレーズが首相の本質的な弱点や欠点を突いていた」と指摘し、「今回の党員票結果により、自民党には来夏の参院選を不安視する声が強まるのは確実だ。首相を取り巻く状況は変化し、従来のような独善的な姿勢は、もはや通用しない」と論じた。
朝日は「真摯(しんし)な反省と政治姿勢の抜本的な転換」を求め、「引き続き政権を担う以上、その前提として求められるのが、問題発覚後1年半がたった今も、真相解明にほど遠い森友・加計問題に正面から取り組むことだ」と批判。「首相に近い人物が特別扱いを受けたのではないかという疑惑。そして、公文書を改ざんしてまで事実を隠蔽(いんぺい)する官僚」の問題放置は許されないと断じた。
長期政権の総括へ向けて取り組むべき課題としては、読売が経済再生を最優先に挙げ、経済の好循環を実現するため「アベノミクスの成果と問題点を検証し、弱点を補って経済を安定的な軌道に乗せる。それによって、財政への過度な依存が改善され、金融緩和の出口戦略を描くことが可能になる。その環境を整えることが首相の責務である」とした。
河北は、2%の物価目標を達成するまでは「従来の政策の貫徹を優先させながら、安定的な経済成長を目指すことが肝要」とし、来年10月の消費税率引き上げに向け「経済への悪影響をできる限り少なくするため大型減税の導入などを議論すべき」と提言した。
日経は、将来世代にも目を向けた政権運営による社会保障制度改革と財政健全化を訴えた。「社会保障の制度の持続性を高め、若者と将来世代の保険料・税負担が過重になるのを防ぐべきだ。現世代に相応の負担を求め、受給者には給付抑制を受け入れてもらう政治の努力が不可欠」と指摘。消費税率について「10%の先の引き上げも含む財政健全化計画をつくり実行に移すべきだ」と訴えた。
信濃毎日は、首相が掲げる社会保障制度の全世代型への改革について「65歳以上の雇用継続や、70歳を超えての年金受給開始を選べる仕組みなどを挙げるものの、全体像は見えない」として制度や財源の具体案を示すよう求めた。
福島民友は「(論戦を通じ)石破氏が打ち出した地方、中小企業、農林水産業の潜在力を引き出すという経済政策は地方にとって魅力に映る。中央や大企業にたまった富が拡散していくはずの経路に発生している目詰まりを解消する視点」を政策に生かすよう提言した。
改憲と対米露注視
当選後のあいさつで首相は憲法改正への強い意欲をあらためて示したが、西日本は「それは国民が本当に望むことなのか」と疑問を呈し「国民の理解が深まらないまま『改憲』へ突っ走る姿勢では『有終の美』は飾れない」「自民党員でさえ、憲法改正の優先順位は極めて低いのだ。ましてや党員ではない、野党支持者も含む国民レベルでみれば、安倍氏の改憲論がいかに性急で突出しているかは明らかだろう」と論じた。
一方、産経は「憲法改正を実現し、日本の未来を切り拓(ひら)くことは、首相と自民党に課せられた重い責務」とし、「党の憲法改正案を秋の臨時国会に提出してほしい。安全保障環境が激変する中、国民投票で『自衛隊』が憲法に書き込まれる意義は大きい」と注文した。
外交問題では、下野、岐阜、佐賀などが「ロシアのプーチン大統領は、北方領土問題の解決という前提条件抜きの平和条約の年内締結を提案。中国との貿易戦争を仕掛けたトランプ米大統領は、対日赤字の解消に強硬姿勢をちらつかせる。両大統領と信頼関係を構築したと胸を張る安倍外交の真価も問われる」と分析した。
デーリー東北、山口などは「今後の最大の難敵は、長期政権に対する『飽き』だろう。『ポスト安倍』を巡る政権奪取への動きも活発化する。首相が求心力を維持していくには、国民の厳しい視線を謙虚に受け止め、風通しの良い政策決定過程を構築していくことが不可欠だ」と総括した。 (審査室)