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2019年 10月8日
国民の声聞く原点に戻れ
残り2年 重点政策精査を
第4次安倍再改造内閣が9月11日、スタートした。新布陣については側近らで固めた「お友達内閣」との批判の一方、「長期政権の総仕上げ」との論評もあり見方が割れた。自民党総裁としての任期が残り2年となり、レガシー(遺産)づくりのために政策遂行の優先順位を見誤ることなく、国民目線に立って重点政策に取り組むよう求める論説が目立った。
側近重用の弊害指摘
首相は閣僚19人中、17人を交代させた。官房副長官や補佐官として安倍首相に仕えた側近の起用が目立つことについて秋田魁は「身内で固めた『お友達内閣』と指摘されても仕方がないだろう。これで適材適所と言えるのか」と強調。福井は「『身内』による忖度(そんたく)政治のまん延が危惧される」と指摘した。
13人が初入閣であることに対し、毎日は「主要派閥の待機組に配慮しつつ、側近議員たちを重用した結果だ」と分析。小泉進次郎氏の環境相抜てきには「『お友だち内閣』批判を薄めたい思惑もありそうだ」とした。
朝日は、留任した麻生太郎副総理兼財務相について森友学園問題を巡る財務省の公文書改ざんで責任を取るべき立場であると訴え「続投を決めた首相の判断は承服できない」と批判した。官房副長官当時に加計学園の獣医学部新設問題で文科省への働き掛けが取りざたされた萩生田光一文科相の起用についても「いまだ真相が解明されていないというのに、既に『過去のもの』と言わんばかりだ」と疑問を呈した。
北海道も萩生田氏の文科相就任に関し「到底納得できるものではない」と非難。麻生氏に対しては「自殺者が出た森友学園問題を巡る財務省の決裁文書改ざんの政治責任を取らず、閣内に居続けているのも首をかしげる」とした。
読売は改造内閣の顔ぶれについて「長期政権の総仕上げを視野に入れた布陣だ」とみる。「党総裁任期が残り2年となり、求心力を維持するため、挙党態勢を固め直そうとする意図がうかがえる」と分析した。
首相が組閣後の会見で憲法改正について「困難でも必ずや成し遂げる決意だ」と強い意欲を示した点について中日・東京は、世論調査では優先して取り組むべき政策として憲法改正の順位は低いと指摘。「社会保障や雇用など国民の多くが望む暮らしの安定よりも、国民が望まず、緊急性もない改憲を優先させるようなことがあってはならない」と主張した。
京都は残り2年の任期で安倍首相が取り組むべき政策課題として「年金を含む社会保障の将来像をどう描くかである」と指摘。「老後の安心に向けた負担と給付の関係はどうあるべきか、議論は避けられない」とした上で「政治のエネルギーを改憲に費やしている場合だろうか」「政策の優先順位を見誤るべきではない」と強調した。
愛媛は「国民の関心が薄い政策を強行するようなことがあれば、政権の集大成に水を差しかねない」とし、「やるべきは、政策の優先順位を付けて、熟議を重ねて磨き上げ、着実に遂行することだ」と提起した。山陽は「政権の総仕上げに入るからこそ、『国民の声を聞く』原点に戻ることが大切だ」として持続可能な社会保障、財政再建、人口減少対策などへの取り組みを求めた。
改憲優先に賛否
日経は「問われているのは、長期政権の基盤を生かした政策の実行力」とし、「経済再生や社会保障制度改革といった懸案に正面から向き合い、着実に成果をあげていく責任がある」と論じた。憲法改正については「自民党などが半ば強引に改憲案の国会発議にこぎ着けたとしても、議論が二分したままでは国民投票で有権者が判断に迷う事態になりかねない」として国会での丁寧な審議を促した。
一方、産経は憲法改正に向けた取り組みを最重要課題として位置付けた。首相が先頭に立ち、改正の重要性を丁寧に国民に説明する必要があるとし「憲法改正の手続きを定めた国民投票法改正案は一歩も前に進んでいない。議論すらしないというのでは、与野党とも政治の無責任が極まる」と述べた。
改造内閣への期待として福島民報は「当面の復旧復興事業の仕上げと、次の十年を見据える道しるべの明示」を挙げ、「復興の成果と課題を総ざらいし、復興庁を継ぐ組織や、事業の元手である財源の手当てをできるだけ早く示す必要がある」と強調。山形は「『地方創生』の初心も忘れることなく力を傾注してもらいたい」と求めた。
安倍首相は11月に歴代首相として通算在職日数が史上最長になる。これを踏まえ東奥日報、下野、岐阜、大分合同、宮崎日日などは「政策の優先順位を見極め、強行突破するのではなく、幅広い合意形成に努力する度量が、最長首相に欠かせない資質である」とくぎを刺した。(審査室)