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2020年 10月13日
国民への説明責任果たせ
課題はコロナ対応、経済再生
菅義偉首相が9月17日、選出され、新内閣が発足した。各紙は社説で新首相の政権運営や、安倍晋三前首相からの路線継承のあり方についてさまざまな角度から論じた。新型コロナウイルス対策と経済再生など課題を挙げて新内閣に注文を付けた。解散総選挙のありようについて論じた社もある。
強権政治の継承懸念
安倍政権の継承について、京都は「まずは安倍政権の総括をするべきだろう。受け継ぐもの、改善すべきものを区別し、課題解決への見取り図を描き直す必要がある」と指摘した。
毎日は「指導者は強大な権力を抑制的に行使すべきであり、国民の理解と納得を得るのが責務だ。ところが前首相と菅氏は、権力は極力、使うものだと考えてきたと思われる」と路線の継承に疑問を呈した。菅氏は、首相の国会出席について「大事なところに限定すべきだ」と述べていた。これに対し朝日は「説明責任を軽視し、国会論戦から逃げ回った安倍氏の振る舞いが繰り返されないか」と懸念を表明した。
信濃毎日は、国民の信を得るために「異論を排除せず、少数意見に真摯に向き合う」「情報を公開し、説明責任を果たす」「憲法を基本に法の秩序を守り、恣意的な解釈をしない」ことが必須だと指摘。これらは安倍政権下でないがしろにされてきたとし、「強権政治を継承せず、ここで終止符を打てるのかが問われる」と論じた。
政権運営の姿勢について、日経は「政策判断の際、なぜそうした決断をくだしたのかを詳しく説明しなくてはならない。国民の理解なしに大きな改革を実現することはできない。迅速と丁寧の両立は簡単ではないが、『その指摘は当たらない』と、批判をばっさり切り捨てることのないようにしてもらいたい」と注文を付けた。
中国は「政策を実現していくためには、専門的な知識と経験を持つ官僚の協力が欠かせない。『安倍1強政治』のあしき前例を改めなければ、官僚が本来の仕事をしなくなる恐れがある」と指摘。中日・東京も「『包摂と説得』の政治の実現には、政治に携わる一人一人が、国民の一部でなく、全体の奉仕者であることを、再認識する必要がある」と主張した。
政権のビジョンを明確に、との注文も相次いだ。神奈川は「縦割りなどを打破して規制改革を進めることによって、どのような社会をつくろうとしているのか。『自助・共助・公助』という言葉の真意も定かではない。改革の先に見据えている社会の姿を内外に示すことは一国のリーダーとして欠かせまい」と指摘した。
茨城、下野、山陰中央、佐賀などは「最高権力者の座に就いた以上、自身が目指す国家社会像を語る必要がある。菅首相が先頭に立って国会論戦に臨み、説明責任を果たす。派閥談合による自民党総裁・首相選出過程を否定し、国民の信任を得たいのであれば、それが第一歩になる」とした。
一方、産経は「急がば回れ。コロナ禍が小康状態にある今こそ国民に信を問うべきであろう。来年までの短期政権でいい、というのであればお勧めしないが」と早期の解散を主張した。
取り組むべき課題について、読売は「経済を成長軌道に乗せるには、前政権で不十分に終わった成長戦略を改めて描き直し、着実に実行に移すことが必要だ」とした。西日本は「まずは新型コロナ対策だ。感染拡大を封じ込め、医療現場を支援する一方、関連の解雇・雇い止め、収入減で苦しむ世帯や中小企業などに救いの手を差し伸べていく必要がある」と主張。北海道は「PCR検査態勢の拡充や病床の確保など国民の命に直結する方策に全力を注いでほしい。経済再生もコロナの影響を受けやすい非正規雇用の正規化を促すような施策を講じる必要がある」と注文した。
地方の活性化求める
秋田魁は「衰退する地方の実情をよく知る菅首相には、地方再生を力強く前進させることを期待したい」と主張した。南日本は「『自助・共助・公助』を基本理念に掲げる。しかし、個々の努力の重要さを強調するあまり、財政的にも立場の弱い自治体の切り捨てにつながらないか。地方を誰よりも知っていると自負するのであれば、競争一辺倒ではない活性化策を打ち出すべきだろう」とした。
沖タイは「安倍政権は『県民に寄り添う』としながら、民意に背を向け、かたくなに『辺野古が唯一』と繰り返してきた。基地の現状を見た上で、玉城デニー知事と胸襟を開き、話し合うことが、真に県民に寄り添う政治の第一歩になる」と求めた。東日本大震災と東京電力福島第一原発事故から来年で丸十年を迎える。福島民報は「菅首相をはじめ関係閣僚は、縦割りを排して喫緊の課題に向き合い、十年目以降の復興の道筋を示さなければならない」と論じた。(審査室)