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2020年 12月8日
米社会の分断修復期待
国際秩序再建 重責自覚を
11月の米大統領選で、民主党のジョー・バイデン前副大統領が勝利を確実にした。敗北した共和党のドナルド・トランプ大統領はこの4年間、世界に対しては、「米国第一」を掲げて超大国としての責務を放棄する一方、米国内では国民の分断をあおり続けてきた。こうした型破りな人物の後だけに、各紙の社説・論説は、バイデン氏の勝利を歓迎するとともに、米国が再び世界をけん引し、国内の分断を修復するよう期待するものが目立った。
対決から対話へ
日経は「指導者の交代を、米国のみならず、国際秩序を安定の軌道に戻す契機にしたい」と期待を込めた。朝日も「米国社会の融和と国際秩序の再建が喫緊の課題である。この大国の軌道を正す歴史的な重責を自覚してもらいたい」と強調した。
中日・東京は、国内の分断修復について、「米社会は傷つき、ささくれ立っている。バイデン氏も『米国に癒やしをもたらす時だ』と強調した。トランプ流のとげとげしい対決の政治から、対話の政治へ転換してほしい」と求めた。
南日本は、トランプ氏が前回選挙を上回る7千万票以上を獲得したことに注目。「グローバル化やIT化、多様化の波に乗り遅れた一部労働者ら『忘れられた人々』が持つ不満の表れに違いない。分断修復のためにも、バイデン氏はこうした層の声をしっかり受け止める必要がある」とした。
選挙はトランプ対「反トランプ」の様相を呈した。読売は「トランプ氏の独善的な政策決定プロセスが、官僚組織や議会の機能低下を招き、米国政治を劣化させたのは明白である」とした上で、「バイデン氏が勝ったのは、こうした手法への反発の受け皿となったからだろう。必ずしも自らの政策が幅広い支持を得たわけではないことは留意せねばなるまい」と指摘した。
信濃毎日は「バイデン氏にとっては、コロナによる経済の急失速も追い風となった。果たしてそれなしで勝利できたかどうか。民主党が有権者に新しい社会像を示せていないことも接戦の要因といえるだろう」と分析した。
また、副大統領に黒人でアジア系、女性で初のカマラ・ハリス上院議員が就任することについて、北海道は「人種や宗教の多様性が活力の源になる。かつての米国が大切にしていた理念を取り戻してもらいたい」と期待した。
公約などの実行に関しては、中国が「まずは新型コロナウイルス禍の克服が求められよう」とした。毎日は「産業の活性化と雇用対策に大規模な予算を投じるという。格差をこれ以上広げないことが重要だ」と強調した。
山陽も、米国の分断はトランプ政権で始まったことではないとし「拡大を続ける経済格差が根っこにはある。この格差を是正するためには低所得者や中間層に響く経済政策も求められよう」と指摘した。
孤立路線の転換促す
福島民友は「バイデン氏は温暖化対策を推進する姿勢を明確にしており、再生可能エネルギーの導入などで脱炭素化を目指す。パリ協定へ復帰する考えも示しており、欧州連合(EU)、中国、日本などと足並みをそろえた加速化を期待したい」とした。西日本も「国際機関や多国間枠組みに後ろ向きな現政権の姿勢から大胆に転換してほしい。地球規模の課題には米国の力が欠かせない」と訴えた。
日本など同盟国との関係では、読売が「日米同盟や北大西洋条約機構(NATO)などの同盟が持つ意義を、米国自身が再確認することが重要」と記した。ただ、中日・東京は「内向きになった米世論は国際問題へ積極的に関与していくことを許さないだろう」とみる。その上で「米国は同盟国・友好国に役割を肩代わりさせるのは間違いない」と指摘した。
日経も、「トランプ政権は在日米軍駐留経費の日本負担を増やすよう求めてきた。バイデン政権になれば交渉が楽になるなどと考えるべきではない」との見方を示した。「『沖縄県の尖閣諸島は日米安全保障条約の適用範囲内か』ばかり尋ねる日米関係では長続きしまい」とも指摘し、日米同盟深化のためには日本側の努力も不可欠である点に触れた。
静岡は、米国が離脱後に日本の主導で実現した環太平洋連携協定(TPP)について、「復帰も検討してもらいたい」と要望した。
外交面について、産経は「トランプ政権が打ち出した中国への厳しい姿勢を維持してほしい」と注文を付けた。
毎日は「『究極的な核廃絶』を目指す路線に立ち戻り核軍縮を主導すべきだ」と訴えた。さらに「不拡散の取り組みもたて直しが必要だ。イラン核合意に復帰し、北朝鮮との協議を再開すべきだ」と主張した。(審査室)