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2021年 1月12日
民主政治と経済 再生へ 在京6紙 コロナ下の新年号

課題解決への「行動」促す

 世界中で新型コロナウイルスの感染が拡大し、2021年は例年以上に先行きが見通せない中でのスタートとなった。今年に延期された東京五輪・パラリンピックの開催、秋までにある衆議院の総選挙などは、コロナの動向が大きく影響するだけに、当面は新型コロナ対策が注目を集める日々が続くだろう。在京6紙は昨年12月31日の東京都の新規感染が過去最多の1337人となり、全国合計で4500人超となったことを元日の1面で報じた。1面トップは朝日、読売、東京がニュース、毎日、産経、日経が連載だった。社説・論説は新型コロナの感染収束に最優先に取り組むべきだとしつつ、コロナ禍で表面化したさまざまな問題の解決に向けて、行動や改革を実行すべきという論調が目立った。

ニュースと連載3紙ずつ

 【1面トップ】朝日「吉川氏に現金 さらに1300万円 鶏卵業者供述 農水相在任前後に」 =自民党衆院議員だった吉川貴盛・元農水相が大臣在任中、鶏卵生産・販売大手の前代表から計500万円を受領した疑いがある事件で、前代表が東京地検特捜部の任意聴取に、大臣在任前後にも計1300万円を渡したと供述していることを報じた。このうち大臣在任中の500万円について、大臣の職務に絡む賄賂の疑いがあるとみて収賄容疑で立件を検討しているとした。

 読売「中国『千人計画』に日本人 政府、規制強化へ 情報流出恐れ 研究者44人を確認」=中国が海外から優秀な研究者を集める人材招致プロジェクトに、少なくとも44人の日本人研究者が関与していることを伝えた。多額の研究費や研究環境を魅力的とした研究者が少なくなかったという。中には日本で多額の研究費助成を受け取った後、中国軍に近い大学で教えていたケースもあったとし、政府は安全保障や重要技術が流出するのを防ぐため、政府資金を受けた研究者の海外関連活動について原則開示を義務付ける方針とした。

 東京「戦前の東京 鮮やかに 本紙が修復・デジタル化 作家・加賀乙彦さん父 撮影」=戦前の東京などの街や人々を記録した映像を入手し、デジタル化したと伝えた。撮影は加賀氏の父親である小木孝次さん。一部はカラーで、1937年の東京宝塚劇場の舞台を映したものは、現存する宝塚の最も古いカラー映像とみられるという。紙面に掲載したQRコードを読み取るとユーチューブの「東京新聞チャンネル」に移動し、復刻動画を見ることができる仕掛けを施した。

 毎日「コロナで変わる世界 第2部パンデミックと社会 中国『闇』ワクチン流入 日本の富裕層 接種」=中国で製造したとされる新型ウイルスの未承認ワクチンが日本に持ち込まれ、昨年11月以降、日本を代表する企業の経営者ら18人が接種していたことを明らかにした。匿名で取材に応じた会社社長のワクチン接種を巡るルポルタージュを核にしたストーリー展開。違法の可能性はあるが、中国がワクチンをテコに影響力拡大を狙っている姿を示した。

 産経「自由強権 21世紀の分岐点 民主主義が消えてゆく 中国型の権威主義、南太平洋で猛威」=21年をコロナ禍で加速した世界の軋みに対峙して21世紀の形を決める分岐点と位置づけた。中国型の権威主義や強権的な振る舞いが増す中で、南太平洋のソロモン諸島がフェイスブックを規制する動きを例に挙げ、権威主義の広がりと、非民主主義な国・地域の数が民主主義の国・地域を上回った事実を示した。日本には自由と民主主義を守る行動と覚悟が問われていると問題提起した。

 日経「第4の革命カーボンゼロ 脱炭素の主役 世界競う 日米欧中 動く8500兆円」=世界で脱炭素の動きが広がったことを、農業、産業、情報に次ぐ「第4の革命」と位置づけ、最先端の動きを紹介した。日米欧中の公的機関や有力大学の試算を集計し、カーボンゼロには21~50年に4地域だけで8500兆円もの投資が必要だとし、海外技術に依存してコスト負担を増やすか、市場として取り込んで経済成長につなげるかで、国家や企業の命運が左右されるとした。

国際協調の先導役に

 【社説・論説】読売「平和で活力ある社会築きたい 英知と勇気で苦難乗り越える」=現在をコロナ禍の混乱と国際秩序の動揺、協調と競争という「四つの要素が絡み合いながら同時進行する、複雑な時代」と形容し、「新しい多国間協議の枠組み形成に向けて先導役を果たすのが、日本の役割ではないか」と問題提起した。そのために「大事なのは国力」とし、「日本の経済構造の立て直しに取り組まなければならない」としたほか、「政治の安定も、国力の大事な要素である」と論じた。

 毎日「コロナ下の民主政治 再生の可能性にかける時」=コロナ対応に完全な答えが見つからない中、「私たちの民主政治がコロナへの対応能力に欠けているのではないか」という疑念を示し、「国民に対し、政治は対話の努力をしたのだろうか」と問い掛けた。一方で自粛期間に国民が政治を注視するようになったことを「再生の芽」と捉え、10月までにある衆院選を「政治がどこまで傷んでいるのかを把握し、復元への道筋を示す機会となる」とした。

 朝日「核・気候・コロナ 文明への問いの波頭に立つ」=長崎原爆資料館の入り口にある「長崎からのメッセージ」を引用した上で、コロナウイルスだけなく、「核や地球温暖化でも、誰もが『当事者』であり、みんなの『行動』が求められている」と訴えた。「様々な領域で若い世代が声を上げていることは心強い」と評価。「潮目の変化がはっきりしているのに頑として動かない山もある」ものの「山を動かす挑戦をいっそう進める好機」とした。

 日経「2021年を再起動の年にしよう」=「経済」「民主主義」「国際協調」の三つを掲げ、「コロナ禍で表面化した問題の解決に向け行動をおこす再起動が必要だ」と指摘した。経済の再生には、「デジタル化や雇用市場の改革など新たな経済・社会を切り開く戦略がいる」と主張。日米欧などが「格差など社会問題や国民の不満を民主主義的な手法で解決」することが急務と指摘し、国際協調ではコロナ対策と地球温暖化対策が試金石となり、日本も積極的に関わるべきだとした。

 東京「コロナ港から船が出る 年のはじめに考える」=1月20日の米新政権の発足、22日の国連の核兵器禁止条約の発効を「試練の船出」と表し、「分断に未来はない」「対立の虚しさに目を覚まし、核廃絶へ協調する好機」と訴えた。針路の鍵は「ラッセル・アインシュタイン宣言」にあるとし、「人間性の結集こそが、核や疫病などへの脅威に協調して立ち向かう力になる」と指摘。「政治の針路を未来志向へと変えねばならない」と説いた。

 産経「中国共産党をもう助けるな」=新型コロナについて「中国・武漢で最初の感染爆発が起きた際、当局による情報隠蔽が、パンデミック(世界的大流行)の引き金を引いたことを忘れてはならない」と主張。戦時中に日本の軍部が、天安門事件では外務省が「瀕死の中国共産党を2度助けた」とし、「3度目は、絶対にあってはならない。もし習近平来日に賛成する政治家や官僚がいれば、それはまさしく『国賊』である」と厳しく指弾した。

 【主な連載企画】朝日=「共生のSDGs 明日もこの星で」(12月28日から)、社会面「フェース トゥ フェース コロナ時代に」、毎日=社会面「夜明けを待って コロナ禍を歩く」(12月31日から)、読売=「明日を築く再起力」(1月3日から)、くらし面「間合い再考」、日経=社会面「Discover70 's」(12月30日から)、産経=社会面「縁 災害が結んだ、私たち」、東京=国際面「再始動 コロナの世界を生きる」、スポーツ面「スポーツの力 第1部 TOKYO2020―21 信じて 前へ アスリートの思い」

 【元日号ページ数(かっこ内の数字は2020、19年の順)】朝日92(108、106)▽毎日64(64、68)▽読売82(90、104)▽日経104(112、104)▽産経72(76、72)▽東京48(48、56)(審査室)

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