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2021年 11月9日
「緊張感」求める民意認識を 衆院選 自民が絶対安定多数

コロナ、経済対策など山積

 4年ぶりとなった衆院選は10月31日投開票された。自民党は261議席を獲得し、公示前の276議席から減らしたものの「絶対安定多数」を確保した。連立を組む公明党は3議席増の32議席を得た。一方、野党第一党の立憲民主党は14議席減の96議席にとどまり、共産党などとの候補者一本化を生かせなかった。各紙は社説・論説で、選挙結果が意味するものを分析するとともに、引き続き政権を担う岸田文雄首相や、野党に注文を付けた。

 朝日は「有権者の審判は政権の『継続』だったが、自民党は公示前の議席を減らし、金銭授受疑惑を引きずる甘利明幹事長が小選挙区で落選した」ことに言及した。その上で「『1強』体制に歯止めをかけ、政治に緊張感を求める民意の表れとみるべきだ」と指摘した。読売も「長期政権の緩みに反省を求め、緊張感のある政治を期待したい。それが今回示された民意であろう」と論じた。

 河北は「政治状況を変える必要性を感じながらも、大きな変革は求めない。きのう投開票が行われた衆院選の結果は、有権者の微妙な心理が反映されたものと言えよう」と分析した。

 多くの社が自民党ナンバー2の甘利氏が小選挙区で敗れたことを象徴的に扱った。北海道は「金銭授受問題を抱える甘利氏への逆風は、金権政治に向き合わない首相への厳しい審判でもある」と主張した。

野党協力 政策提示に課題

 一方、289小選挙区のうち7割超の選挙区で候補者を一本化し、与党と一騎打ちの構図に持ち込んだ野党側については、評価が割れた。新潟は「立民、共産を軸とした野党共闘は自民の甘利明幹事長ら大物を破る原動力となるなど、一定の成果を出した。野党側は、手応えを得たのではないか」と肯定的に捉えた。神奈川も「共闘では一定の効果が見られたことを糧にして、与党に対抗する前向きな政策を磨き上げることが求められよう」と論じた。

 産経は対照的に「共産などと選挙協力した立民は振るわなかった。基本政策の異なる共産との『閣外協力』路線は、政権への道をかえって閉ざす点にも気づくべきである」と指摘した。

 山梨日日は「野党の共通政策には実現に向けた手順が示されず、あいまいさを残した。立民の枝野幸男代表は野党協力の意義や政権奪取後の連携の在り方をほとんど語らなかった。自民が後退する中で、『政権交代』が現実味を帯びなかった一因でもあるのではないか」と分析した。京都も同様の観点から「選択肢としての信頼を勝ち取るには、目指す政権の姿を明確にすることが不可欠だ」と注文を付けた。

 また、低投票率(戦後3番目に低い55・93%)にとどまった点について、毎日は「投票率が大幅に上がらなかったのは、与野党が争点を明確に示せなかったからではないか」と指摘した。

 岩手日報は「今選挙は与野党どちらにも『風』は吹かず、有権者の関心は高まらなかった。それが投票率の低さに表れている。関心の低さを招いた第一の要因は与党側にある」と矛先を自民、公明両党に向けた。神戸は「民主政治は有権者と政治家の信頼関係の上に成り立っている。政治と国民との距離をどう縮めるのか、各党が問われる重い課題だ」とした。

国民への説明軽視にくぎ

 第2次岸田内閣に対し、山形は「政策面では、何と言ってもコロナ感染『第6波』への備えと国民生活の再建である」とした。その上で、「政策決定で独善を避けるべきなのは言うまでもない。首相は野党の背後にも支持した有権者がいることを心に刻み、国会論議を尽くさねばならない」と主張した。中日・東京も「これまでの政権のように独善に陥り、国会や記者会見などで国民への丁寧な説明を怠れば、(コロナ)対策の実効性を上げることはできない。必要であれば、野党の提案も大胆に採用する度量が必要だ」と訴えた。

 日経はさらに、「コロナ禍で困窮している人たちや企業への支援は重要だが、一律給付のようなばらまき政策は効果が不明だし、厳しい財政状況を考えればとるべき選択肢ではない。経済成長と財政再建を果たしていく中長期ビジョンを打ち出すことが肝要だ」と説いた。日刊工業も「18歳以下の子どもに一律10万円を給付する案には慎重であるべきだ。国民は目先のバラマキより、財政健全化を含めた国の将来の持続可能性にこそ関心がある」とくぎを刺した。

 静岡はコロナ対策を求めた上で、「米中対立で緊迫化する外交安全保障、原発とエネルギー政策、持続可能な農業や食料の問題は国際社会で日本の立ち位置も問われる重要課題だ。脱炭素やデジタルを軸とした行政改革もしかり」と指摘した。(審査室)

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