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2022年 1月25日
分断解消への一歩が必要 コロナ下 地方各紙の元日号

地域の魅力 発信する好機

 地方紙の元日付社説は、新型コロナウイルスとの闘いが3年目に入ったことから、感染拡大を防ぎつつ社会の課題や新しい姿を見つめ、一歩を踏み出すよう望む論調が多かった。テレワークの普及など働き方の変化を踏まえ地域の魅力を再確認し、発信することの意義を考えるものも目立った。関心が高まる国連の持続可能な開発目標(SDGs)などへの取り組みが必要だと訴える社も複数あった。

女性活躍へ 思いきった改革を

 新型コロナの新変異株「オミクロン株」の感染拡大で不安が解消できない状況を受け、分断や格差、貧困などの問題に目を向けた社が少なくなかった。北海道は「豊かで幸せな明日を求めようとする個々の気持ちは尊く、そこに軽重はない。その根源的な願いを協調を通して守りたい」と記した。新潟も「細くなってしまった人のつながりを再生する時だ」「性別や年齢、国籍などにかかわらず、誰もが安心して暮らせる共生社会の実現に向けて、舵を切らなければならない」と唱えた。

 愛媛は「他者の話に耳を傾けることは、苦しみに寄り添い、分断を繕う一歩になるのではないか」と問い掛けた。岩手日報は「閉塞感を打ち破るために、多様性は力になるに違いない」「違いを認め合い、共に歩む。新たな地域社会を創りたい」と表明した。

 人々の意識改革が大切だとする社もあった。西日本は、環境や財政の問題に触れながら「過去と未来がつながっていて現在がある。この感覚が『今だけ、自分だけ』を乗り越える足掛かりにならないだろうか」と問い、自らがどのような先祖になろうとしているかを考えてほしいと呼び掛けた。徳島は「利他の精神」を紹介。「他者のために何ができるか。私たちが少しだけ考え方を変えれば、新たな未来を切り開くことができるのではないか」と提案した。

 コロナ禍や気候変動などに対し、より強い危機感を示し、実際に行動するよう要望した社もあった。河北は「将来へ向け、意識を変えるだけでなく、実際に行動に移すことができるのか。今年こそは、その真価が問われる1年になる」との考えを示した。神戸は市民発電や有機農業など社会をより良くするための取り組みの例を挙げた上で「踏み出す人がどれだけいるか。社会変革は一人ひとりの一歩から始まる」と訴えた。

 南日本はコロナ禍を契機に、働き方などの従来の慣習を改めたいと言及した。その上で「昭和のスタイルと言えば『男社会』こそ、その典型ではないか。企業の管理職、国会や地方議会の女性の比率は国際的にも低い水準が続く」と指摘。女性活躍に向け思い切った改革を急ぐよう求めた。また、北日本は人材育成の課題を指摘。若手研究者や子供を例に挙げ、「"根っこ"を育てることが日本はおろそかになっていないか」と警鐘を鳴らした。

 地方の再生や創生、魅力の発信について、山陽は「自らの地域の魅力を再確認し、誇りを持って生きる姿を地域全体で共有し、点から線、面へと広げる必要がある」と説いた。岸田文雄首相が掲げる「デジタル田園都市国家構想」に触れ、「大都市の企業がネットを通じて地方の利益を吸い上げるのでなく、窮屈な都会で暮らす人たちに地方の魅力を伝える手段にすべきだ。地方から東京へ。情報の流れを変えるきっかけにしたい」と提唱した。

 上毛もこの構想について取り上げた。地方と都市の格差是正は容易ではないとしつつ「県民一人一人がまず小さな一歩を踏み出してみる。その勇気を新聞が後押ししたい」と意気込みを示した。山陰中央も、「地方回帰」の流れは鈍化しているように映るとしながらも「東京一極集中を解消する好機であるのは間違いない」「私たち自身が、コロナ禍を機に仕事のやり方や時間の使い方を見直し、より豊かな生活を送ることが、地域の魅力向上、そして都市部から移住者を呼び込む流れにつながるだろう」と期待を寄せた。

 魅力を発信する方法に関し、山形は「多くの人が共有する価値観にいったん〝翻訳〟して共感を生み出す必要がある」とし、「有用な武器の一つ」としてSDGsを挙げた。長崎は、地方で生活する魅力の発信を模索すること自体が「『地方はどうやって生き残るか』と考え直すことでもある。地元の活力をもっと引き出したい」と説いた。

参院選注視 SDGsにも重点

 注目される夏の参院選について、東奥、福井、岐阜などが岸田政権の課題対処に評価を下す機会と捉えた。神奈川は「『民主主義のかたち』が問われることになろう。安倍・菅時代に露呈した深刻なひずみは放置してはいけない。日本国憲法施行75年という節目でもある。足元を見つめ直し、来し方と行く末をあらためて考える年にしなければなるまい」と論じた。

 中国は、各国の例を挙げながら選挙を軸にした代表制民主主義の機能不全やその立て直し方に言及。「私たち有権者が問われている。揺らぐ民主主義に命を吹き込み、国民主権の政治を取り戻そう」と提言した。

 沖縄県は施政権返還50年の節目となる。沖タイは、さまざまな分野で大きな転換期を迎えていると強調。その中でも貧困という負の連鎖の克服、自立型経済の構築、沖縄を二度と戦場にさせないという新たな平和運動の3分野を巡り「具体的な成果を挙げていく跳躍の年にしたい」と決意を示した。琉球は「半世紀前に琉球政府が日本政府と国会に求めたのは、自己決定権の確立であり、民意を尊重することであった」「先達が示した原点に立ち返り、その意思を実現しなければなるまい」と覚悟を表した。

 中日はSDGsを取り上げ「乱暴、過剰に、ではなく、いい塩梅(あんばい)で、うまくさじ加減をしながらやる」ならば、自然もそれに応え、人間と自然のよい関係を長続きさせることができると説いた。「持続可能な開発」を「ざっくり『ほどほどのススメ』ぐらいに理解しておいても、あながち見当違いではないのかもしれません」とまとめた。

 静岡は「全ての社会活動が、脱炭素化と持続可能性を問われる2022年が始まった」との認識を提示。脱炭素化の道のりは険しいが、「たじろぎ、傍観していてはならない。座して恩恵を待つなら、都市間競争で負け組になる。明確な将来像を打ち出し、民間投資を呼び込む努力は地方にこそ求められている」と叱咤(しった)した。

 京都は「豊かな生活を目指す経済活動が気候危機となって人間を脅かす悪循環が、いよいよ際だってきた」と懸念を表明。「化石燃料の消費を前提に成長を追い求める経済・社会システムを維持し続けることができるかどうかが鋭く問われている」と分析した。

 信濃毎日は、プラスチックごみの蓄積を解決することが重要だとし、「一人一人の選択で社会を変える道は見えている。暮らしを見直した先にある豊かさへ。脱炭素とともに脱プラも大きなうねりにしていきたい」と結んだ。

ニュース33紙、企画・連載38紙

 【1面トップ】33紙がニュース、21紙が企画、17紙が連載でスタートした。ニュースと連載の主な見出しを拾う。

 《ニュース》北海道「道内沖に国内最大級風力 ノルウェー大手計画 出力『泊』2倍 4海域に『浮体式』」、中日「名大に『脱炭素センター』 4月 技術も人も 変革探る キャンパス 全て再エネに」、中国「無投票『信任得ず』6割 地方議員 無風に危機感 広島県内アンケート」、愛媛「西条 鳥インフル 高病原性と確認 県内初 14万羽殺処分」、大分合同「衛星情報使いサービス提供 県内で開発の動き 大分空港 宇宙港化 契機に」。

 《1面連載》山形「DXデジタルトランスフォーメーション 未来を開く 県内の実践者たち」、上毛「ぐんまの明日 コロナ後の社会」、新潟「にいがた 生き方 暮らし方」、北日本「楓との約束 薬都プライド」、京都「つなぐ Our Voices 性を考える」、宮崎日日「カメラルポ 環境異変 自然からの警告」、沖タイ「沖縄の生活史~語り、聞く 復帰50年」。(審査室)

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