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2022年 11月8日
習氏1強の加速危惧 中国共産党大会
「台湾有事」に備え議論必要
5年に一度の中国共産党大会が10月16~22日に開かれた。総書記を2期10年務めた習近平氏は自らへの権力集中を進め、台湾武力統一の選択肢を含め強国・軍拡路線をさらに鮮明にした。日本の安全保障や経済に与える影響は大きい。各紙は月末にかけて大会について手厚く報じた。社説・論説で複数回取り上げた社も目立った。
読売は17日付夕刊で欧米各紙の報道を紹介。西側メディアの論調は総じて厳しい。習氏は69歳。北海道は、近年の最高指導者として3期目は異例であり「4期目以降も視野に入れているとの観測も出ている」としたほか、党大会時に68歳以上なら最高指導部から引退する慣行から外れる「初ケース」だと指摘した。秋田魁は文化大革命をもたらした「建国の父」・毛沢東に対するような「個人崇拝の動き」が習体制下で再現されかねないことに危惧を表明した。
権威高める布石周到
中国は共産党の一党支配体制である。しかし文革への反省から、鄧小平氏が後継者に選んだ江沢民氏、その跡を継いだ胡錦濤氏の時代は集団指導体制をとった。今回の党大会後に再編された新指導部は、習氏の側近以外は排除され、「ブレーキのない権力、物言えぬワンマン統治」(朝日)となった。
産経は「最高指導部の政治局常務委員が一つの派閥で占められるのは初めてであり、集団指導体制は崩壊した」と論じた。中日・東京は、新型コロナウイルス対策などでの「失点」にもかかわらず習派が昇進する一方、胡春華氏ら他派閥の幹部が降格・引退を余儀なくされた新指導部人事について言及。「国際社会は、政治的な意思決定のバランスや透明性を全く失った異形の大国と対峙していくことになる」と評した。
中国は、習氏の地位と思想という「二つの確立」が全党に求められるようになったことで「党をイエスマン集団に変えたと言えよう」とみた。その上で「終身支配の思惑さえうかがえる」と記した。習氏に深刻な健康問題が起きなければ、2020年代末や30年代にかけて長期政権が続くことが考えられる。
北日本は、習氏が10年代後半以降、自らの名を冠した思想の宣伝や自身の「核心」呼称、さらには国家主席の任期撤廃など、権威を高めるために打ってきた布石について「その周到さは異様なほどである」と振り返った。
共産党内の暗闘を勝ち抜いてきた習氏の冷徹さ、老獪さは並々ならぬものがある。とはいえ一強体制は、単なる個人的野心の産物ではない。毎日は、高度経済成長の限界と経済格差拡大、少子高齢化に直面し、党内で「一党支配の将来に対する危機感が高まっていたという事情」があると指摘。「難局を乗り切るには、強い指導力と社会統制によって、国家主導の発展モデルに転換することが必要と判断したのだろう」と分析した。
その表れが、共産党の支配を強めつつ国力を高める発展モデル「中国式現代化」である。日経は「政治的な思惑の産物」だと批判。市場経済重視への転換を求めた。しかし、習氏は党大会活動報告で人類の「新たな選択肢」だと言い切り、欧米との違いを強調した。
こうした経済・ビジネス環境の悪化に加え、愛媛や南日本などは香港を含めた言論や民主派の弾圧、少数民族の抑圧への懸念を挙げた。何より大きなリスクとして、読売など複数の社が台湾侵攻の危険の高まりを指摘している。米国は軍事力で台湾を防衛する可能性を排除していない。台湾に近い尖閣諸島への領海侵入を中国が繰り返す状況下では、日本だけでなく世界全体を巻き込む戦争にエスカレートしかねない。
沖タイは「中国との対話を絶やすべきではない」と注文を付けた。琉球は「沖縄県民の立場からは『有事』をあおる言動には反対せざるを得ない」と主張。「偶発的な軍事衝突が起きないための信頼構築」を求めた。
北日本は「有事に判断を誤らないよう、平時の今のうちに『最悪』を想定し、冷静な議論を重ねたい」と提唱した。
京都は習氏が「米国など『外国勢力の干渉』への敵視をあらわにし、軍事的圧力の強化を加速させる構えだ」とした。その上で「独断でウクライナに侵攻したロシアのプーチン大統領の姿とも重なりかねない」との懸念を示した。
民主主義の在り方探る
中日・東京は29日付の「ぎろんの森」欄で27日付社説から議論を発展させ、中国などの権威主義国家の数とその人口が民主主義を上回っている実情を紹介した。権威主義は自国民から自由を奪い、言論の自由がない国では権力者が暴走すると指摘。民主主義のあるべき姿を考え続け、少しでもよりよい制度とするために行動しなければならないと説いた。(審査室)