1. トップページ
  2. 新聞協会報・紙面モニターから
  3. 医療体制の強化が前提 新型コロナの5類移行

2023年 2月14日
医療体制の強化が前提 新型コロナの5類移行

科学的根拠 丁寧な説明必要

 政府は1月27日、新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けを5月8日から、季節性インフルエンザなどと同じ「5類」に引き下げることを決めた。コロナ感染者の国内初確認から3年。市民はこの間、外出などの自粛や規制に縛られた。経済活動の停滞も招いた中、社会や経済の正常化に向け、事態は大きな転換点を迎えた。しかし感染の収束は見通せず、重症化リスクが高い高齢者を中心に医療をどのように確保していくのか課題も多い。政府は今後、具体的な医療体制を示すとしている。コロナは流行を繰り返すことが予想される。医療体制の強化に加え、費用負担の増加を懸念する論調などがみられた。

高リスク者守る策も焦点

 医療の確保や財政支援について、中日・東京は「感染症医療の安定的な確保も欠かせない。コロナの感染力は依然強く、一部の発熱外来や救急医療を逼迫させている。医療態勢を維持するため、医療現場への財政支援は継続したい」と訴えた。福島民友は医療費の負担軽減を巡り「自己負担が増えれば、受診を控え、感染拡大につながるとの指摘がある。治療費や薬も高く、当面の公費負担の継続は当然だ。国の財政事情が厳しいという理由だけで、必要な医療を受けられないということがあってはならない」と主張。医療の強化が優先だと指摘した。

 神戸は5類に引き下げるに当たり「再び逼迫する事態を招かないよう、政府と自治体が連携し、診療体制を整えるべきだ」と強調。医療体制の確保が大前提になるとの見解を示した。徳島も同様に「移行後、より感染力の強い変異株の出現で、急激に感染が拡大するような場合でも即応できるのか。現行の対策の中で維持すべきものは維持し、臨機応変に対応していく必要がある」と医療の整備を求めた。

 5類引き下げにより規制が緩む中で高齢者をどのように守るかも焦点だ。熊本日日は「主に高齢者など重症化リスクが高い人を対象にしている入院措置や勧告もできなくなる」と懸念を表明した。下野は「高齢者や基礎疾患を抱えた高リスクの人々をいかに守るかに尽きる」とした上で、「入院、治療ができるよう医療機関の逼迫を回避する体制を改めて強化することだ」と慎重な対応を訴えた。

 信濃毎日は「世界最悪レベルとされる国内の感染状況をどう受け止め、どう改善するのか。その説明が全くない。春の統一地方選や低迷する支持率を意識した政治の思惑で進めているのではないか」と不信感を示した。

 なぜ今類型を引き下げるのかについて、丁寧な説明や情報発信を求めた社も複数あった。京都は「科学的知見に基づいた慎重な判断でなくてはならない」と指摘。「全国旅行支援を開始し、水際対策も大幅に緩和した。ここにきて類型を引き下げる必要性や時期の妥当性について、政府は丁寧に説明すべきだ」と論じた。高知も「足元は『第8波』のさなかで、国民の不安は依然大きい。政府には転換の科学的な根拠や、今後の対策について丁寧な説明が求められる」と注文を付けた。愛媛も「国民にメリットとリスクの理解を促し、混乱なく新しい段階に移行するため政府は情報発信に努めてもらいたい」とした。南日本も同様に「国にはリスクや根拠を含めた丁寧な説明と、感染状況を見極めた上での段階的な移行措置が求められる」と慎重な対応を要望した。

 読売は「新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけを見直すことで、どのような利点があるのか。政府はこれまでの考え方を転換する狙いを国民にわかりやすく示すべきだ」と移行の目的を明確にするよう求めた。日経は「科学的根拠をもとに、何を基準にどのタイミングでこうした措置を縮小するのか、わかりやすく示してほしい。その際、重症化リスクの高い高齢者らを守る仕組みは欠かせない」と訴えた。新潟も「医療機関などは感染状況を注視しながら、移行により何が変わるのか国民に周知徹底し、混乱が生じないよう準備を進めてもらいたい」と要望した。

マスク巡る対応 慎重に

 国民の関心を集めているマスク着用の在り方を巡り、北海道は「専門家には感染対策として着用は必要との意見がある。リスクが高い高齢者を守る視点からも『マスクなし』の日常へと性急に転換することは避けねばならない」とした。産経も「屋内のマスク着用を原則不要とすることも検討されているようだが、いつでもどこでも外していいわけではあるまい。正確で丁寧な情報発信が求められる」と記した。朝日は「マスクの有効性は広く認められている」と説明。「場面や状況に応じたきめ細かなリスク評価と情報発信が必要となる」と述べた上で、慎重な対応と国民への説明を政府に求めた。(審査室)

ニュース&トピックス

ニュース&トピックス

ページの先頭へ