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2023年 12月12日
処理水、台湾巡り対話必要 1年ぶりの日中首脳会談

関係改善に向けた外交促す

 岸田文雄首相と中国の習近平国家主席が11月16日(日本時間17日)、米サンフランシスコで約1年ぶりに会談した。両首脳は共通の利益を拡大させる「戦略的互恵関係」を推進する方針を確認した。一方、東京電力福島第一原発の処理水海洋放出や中国での邦人拘束、台湾情勢などの懸案で具体的な成果と言える進展はなかった。各紙の社説・論説は、かたくなな中国の姿勢を批判しつつ、さらなる対話により局面打開を探るよう両国に求めた。

 中日・東京は、関係改善に向けた両国の意気込みに温度差を感じるとし「懸案の解決に乗り出せる空気の醸成が必要だ」と論じた。その上で「対話の扉が閉ざされなかった点は評価できよう」とした。河北も「トップ同士の定期的な会談は関係の安定化に向け、大きな意味を持つ」と評価。山形も「冷え込んだ両国関係をこれ以上悪化させず、修復を図る動きと言えよう」と捉えた。

 上毛、長崎などは「日中間の個別課題で解決に向けた前進があったとは言い難い」と評した。北國は「戦略的な互恵関係を本当に目指すのなら、まず中国側が行動で示さなければなるまい」と指摘した。

邦人の早急な解放求める

 処理水問題では、中国側が「核汚染水」だとして海洋放出に反対。日本産水産物の輸入を規制している。福島民報は「国際的な機関や世界の主要国が海洋放出の妥当性を認めても、突破口にならない」と分析した。福島民友は規制撤廃に向け「専門家による議論の場で、双方が科学的な検証などを尽くすことが重要だ」と訴えた。

 茨城は「協議継続の形をとった引き延ばしとならぬよう早期打開に向けた交渉が求められる」とくぎを刺した。愛媛は輸入規制の即時撤廃を迫った岸田首相の姿勢を支持した上で「透明性を確保し、理解を得ていく努力が今後も必要となる」と述べた。徳島は「政府は早急に協議を働き掛け、解除への糸口を探る必要がある」と断じた。北海道も「情報公開の徹底など、さらに対応を工夫する必要がある」とした。

 邦人拘束についても、中国政府の対応に厳しい意見が相次いだ。日刊工業は「日本企業の中国離れを助長しかねず、中国政府には適切な対応を求めたい」と強調した。日経は「理由不明のまま日本企業の派遣人員が拘束される事件がある以上、中国に人員を送るのを躊躇するのは当然だ」と批判。新潟も「中国進出や投資判断への影響は避けられない。中国政府は早急に解放に応じるべきだ」と決断を求めた。朝日は経済不振にあえぐ中国の地方政府に日本企業の投資への期待があると指摘。「このままでは、『互恵』は絵に描いた餅になりかねない」と警告した。

 西日本は「不透明な法律の存在は中国経済にとって不利益になることを、日本から積極的に説いてみてはどうか」と提案した。毎日は「中国経済が失速する中、日本も双方の成長に資する協力案件を探ることが求められる」とした。

 日本の排他的経済水域(EEZ)内に中国が設置したブイを巡っても、中国の姿勢に軟化はうかがえなかった。読売は海洋権益を守る姿勢を明確にすべきだとして「中国がブイの撤去に応じないなら、日本で処理する必要がある」と主張した。

 両首脳の応酬になった台湾情勢に関しては、中国が「台湾問題では、日本も米国をはじめ関係各国と連携して粘り強く中国に自制を求めていくべきである」と論じた。高知は「緊張緩和には対話が不可欠で、日本も積極的に関与する必要がある」とした。

日本は米中の橋渡し役を

 今後の日中関係を巡り「相互の訪問を含め意思疎通を緊密にし、両国の安定的な関係を再構築してもらいたい」(秋田魁)「緊密な対話を継続し、個別課題を処理していく知恵を双方が絞るべきだ」(宮崎日日)などと求める意見があった。「共存こそが両国の利益であり、地域の安定にもつながるものだ」(下野、大分合同など)との見解も示された。京都は「日中の経済関係は強く、紛争や気候変動への国際対処のためにも溝を深めぬ外交力が問われる」と結論付けた。

 日本の外交姿勢について産経は、米国などと連携し「対中抑止力の向上に努める必要がある」と強調した。神戸は、米中が台湾や南シナ海などを巡って対立する情勢下で「日本は両大国の間に立って外交の橋渡し役を担える位置にいる」と指摘した。熊本日日は「東アジア全体の安定に資するためにも、対話を主体とした日本独自の外交が求められる」と述べた。信濃毎日は「岸田政権は、米国の目を通した対中国外交から抜け出す必要がある」と主張した。(審査室)

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