1. トップページ
  2. 新聞協会報・紙面モニターから
  3. 「命が最優先」呼び掛け 能登半島地震

2024年 3月12日
「命が最優先」呼び掛け 能登半島地震

冬季災害への備え促す

 石川県北部で元日に起きた能登半島地震では200人以上が犠牲になった。2か月余りが過ぎた現在も多くの被災者が避難生活を強いられ、インフラなどの復旧は緒に就いたばかりだ。関連する社説は休刊日を挟んだ3日付から1か月間、ほぼ連日いずれかの紙面に掲載された。政府に人命救助や支援を急ぐよう要請。2か月が経過した3月初旬にかけて、人口減少時代の災害との向き合い方などについても問題提起した。

 各紙は発生直後から取材しニュースサイトなどで報道。号外を発行した社もあった。石川県に本社を置く北國は3日付社説で「悪夢のような年明けに言葉もない」と書き起こした。被災者への具体的な注意点として「余震と『通電火災』に警戒を」と見出しに掲げた。「折れそうになる心を奮い立たせ、この試練を乗り切ろう」と力を込めた。同紙をはじめ地元紙はその後もさまざまな切り口で地震を取り上げている。

 中日・東京・中日北陸・日刊県民福井は3日付で「命守る行動を最優先に」との社説を載せた。東日本大震災(2011年)の津波被害が教訓となり、漁港が多い能登で高台や内陸にすぐ避難した人が多かったことに言及。揺れを感じたら今後もすぐ逃げるようあらためて呼び掛けた。

 北日本は地元の富山県内でも負傷者が出たと3日付で伝えた。鉄道の運休や道路の一時通行止めが起きたとした。新潟は3、6日付などで新潟県内で発生した液状化現象について論じた。

大震災回顧 将来に備え

 被災地に思いを致しつつ、北陸以外で過去に起きた、あるいは予想される巨大地震に言及した社もあった。福島民友は「どうしても東日本大震災を思い起こさざるを得ない状況だ」、熊本日日は「2016年4月に起きた熊本地震の記憶がよみがえった人も多かったのではないか。被災地のためにできることはないか、と考えている人もいるだろう」と記した。

 高知は「本県も将来、南海トラフ地震が起きれば、同様、いやそれ以上の過酷な状態に置かれる恐れがある。北陸の状況は人ごとではない」と締めくくった。

 朝日は輪島朝市通りの大火について、阪神・淡路大震災(1995年)で初期消火が追いつかず延焼が広がったことを想起させると述べ、首都直下地震などへの備えを促した。

 災害が起きるたびに多くの課題が浮き彫りになる。今回は東日本大震災の津波映像を加工するなど悪質な偽情報がインターネット上に流れた。読売などが救助の妨げになりかねないと警鐘を鳴らした。その後も複数紙が災害デマを社説のテーマとした。

 能登には志賀原発が、新潟県には柏崎刈羽原発がある。今回は両原発とも停止中で放射線漏れはなかった。とはいえ福島第一原発事故の影響が続いていることから、安全性の確保や電力会社などによる情報発信、今回発生した道路寸断などの課題を複数の社が指摘。事故が起きた時に住民が避難できるのかと厳しい目を向ける姿勢が目立った。日刊工業は柏崎刈羽について「再稼働に向けて安全対策には万全を期してもらいたい」と注文を付けた。

 能登へ向かう予定だった海上保安庁機が2日に羽田空港でJAL旅客機と衝突した事故についても、数紙が社説で取り上げた。

子供の学習・受験支援を

 1週間が経過する頃からは、避難の長期化や二次避難、復旧・復興支援、今後の防災・減災を見据えた社説が増えた。各紙は見出しで「孤立地域の解消が急務」(北海道)、「被災者の寒さ対策急げ」(秋田魁)、「災害関連死を防ぎたい」(茨城)などと主張した。産経などは被災した子供の学習・受験支援、心のケアを訴えた。

 山陽は住宅耐震化の遅れを憂慮し、自治体による啓発を促した。宇部は食料・物資の備蓄は十分なのかと問い掛けた。

 半島部を地元とする紀伊と南日本は、険しい地形のために交通・通信が断絶しやすく、物資輸送が遅れるといった半島災害リスクを検証した。河北は、避難所開設を含む冬季防災訓練を東北地方で実施しているのは秋田県のみだと指摘。他県でも実施を検討すべきだと説いた。

 発生1か月前後の社説では、信濃毎日などが災害ごみ対策を訴えた。日経は国際的な人道団体が衛生環境などを定めた「スフィア基準」を挙げ、避難生活の質向上を求めた。

 中日・東京などは発生2か月に合わせ、宿泊や商業、酒造など能登で始まりつつある地域経済再生の動きを紹介。北日本は、政府が奥能登に限定して住宅再建支援金の特例上乗せを打ち出したことに触れた。富山県の被災世帯や今後起きうる地震との公平性、整合性に疑問を投げ掛けた。(審査室)

ニュース&トピックス

ニュース&トピックス

ページの先頭へ