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2024年 5月14日
日米同盟強化に評価と懸念 国賓待遇の首相訪米 

中国との対話 必要性指摘も

 岸田文雄首相が4月10日(日本時間同日)、バイデン米大統領とホワイトハウスで会談した。自衛隊と在日米軍の連携強化に向けた指揮・統制枠組みの見直し、防衛装備品の共同開発・生産促進のための定期協議の設置などで合意した。国賓待遇の首相訪米は9年ぶり。両国を「グローバル・パートナー」と位置付けた首相の姿勢は日米同盟の変容を印象付けた。首相訪米に対する各紙の社説・論説は評価と懸念、批判が交錯した。

国民への説明求める

 日米首脳は、対中国を念頭に同盟関係のさらなる強化に踏み出した格好だ。読売は「幅広い分野で『協働』していくことで合意した意義は大きい」と評価。産経は「戦争を起こさないための方策を打ち出した両首脳の合意を支持」するとした。「緊密に連携する方針で一致したことには意義がある」(山形)「中国による一方的な現状変更を許さない姿勢を改めて強調した意義は大きい」(福島民友)「日米関係の重要性をバイデン大統領と確認したことは意義がある」(山口)などの前向きな捉え方もあった。

 北海道は「日本に地域の安全保障を肩代わりしてもらいたいのが本音だろう」と米国の意図を分析。神戸は「国民への丁寧な説明と合意形成の努力を欠いたまま、首脳レベルの『約束』として既成事実化してしまう」と首相の手順を批判した。東奥や茨城なども「国民や国会への説明責任は必須だ。慎重な検討を求めたい」と強調。日本海、長崎などは「他国軍の武力行使との一体化が加速しかねない」と不安視した。沖タイは「さらなる基地負担の増加が懸念される」とした。

 指揮・統制枠組みの見直しを巡り北國は「自衛隊と米軍がより一体的に行動できるよう調整しておく必要がある」との見方を示した。南日本は「戦後日本が国際社会に示してきた『平和国家』の形骸化の危機すらはらむ」と指摘。京都は「統合が進むと日本独自の指揮権を確保できるか疑問だ」とし、信濃毎日は「米主導の作戦に組み込まれて『参戦』する懸念が増す」と訴えた。新潟は「首相の姿勢は前のめりに映る」として国民の理解が必要だと強調した。

 防衛装備品の共同開発に対しても秋田魁は「軍拡競争のような事態は避けなくてはならない」と警告。大分合同は「国際紛争を助長する恐れはないか、注視しなければならない」と呼び掛け、下野、岐阜、山陰中央なども同様の主張を掲げた。中国は、米軍が情報や装備で勝る状況を踏まえると「自衛隊が独立性を保てるかどうかはおぼつかない」と警鐘を鳴らした。軍事面の協力強化に徳島は「武力を振りかざしての圧力一辺倒では緊張を高める」と危機感を示した。

 連邦議会での岸田首相の演説も注目された。首相は「堅固な同盟と不朽の友好を誓う」と明言し、世界の平和と繁栄のため米国とともに責任を担うと強調。日経は「安全保障などで米国に際限なく協力するかのような印象を与えた面もある」と指摘した。静岡は「見かけの華やかさを、そのまま外交成果と見ることはできない」と冷ややか。琉球は演説に「自由と民主主義」との文言が盛り込まれていることに触れ「日本政府は沖縄の声を国内政治と対米交渉に反映させなければならない」とした。

対中外交 政府に対応促す

 訪米中にフィリピンのマルコス大統領も交えた日米比首脳会談も行われ、南・東シナ海での中国による威圧的行動を非難した。抑止を狙ったが、中国は反発している。日刊工業は「東南アジア諸国連合(ASEAN)や太平洋島しょ国などで〝仲間づくり〟を加速することが求められる」と受け止めた。朝日は首脳や閣僚級の直接対話など「実際の行動が、日本にも強く求められる」とした。毎日は抑止力の強化は必要だとした上で「偶発的な衝突につながるリスクは封じ込めなければならない」と提起した。

 中国に対抗する取り組みに対し「日米両国が連携して抑止力を高める必要性は理解できる」(西日本)「抑止力強化に向け、結束の誇示は確かに意義があろう」(山陽)などと一定の理解を示した社説がある一方、くぎを刺す意見も目立った。高知は共同声明が中国との意思疎通の重要性に言及したことを取り上げ「こうした姿勢を建設的な関係へとつなげることが重要だ」と指摘。「日中のハイレベルな対話が進むのか、効果的な手だてを探る努力も積み重ねてほしい」(熊本日日)「粘り強い対話の道を模索する必要がある」(愛媛)と、中国との関係強化も求めた。

 中日・東京は「米国が独善的な行動に走る場合には誤りを正し、修正を促す役割があることも忘れてはならない」と強調。河北は「国益を考えれば、一刻も早く独自の対中外交に乗り出すべきだ」と日本政府に求めた。上毛、福井なども「気が付いたら米中が接近し日本だけが取り残されていたとの事態」を避けたいとした。(審査室)

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