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2024年 6月11日
改正論議 各社の姿勢鮮明 憲法記念日

地方自治法 意義強調も

 施行から77年を迎えた憲法記念日の紙面(5月3日付)には、いまの国際情勢や国内の政治・社会状況に言及しつつ、憲法の理念や改正論議に引き付けて考察する社説が並んだ。憲法9条や平和主義を巡る各社のスタンスがあらためて鮮明になったほか、国民主権や基本的人権の尊重といった理念を再確認する内容が目立った。

暮らし守る外交力必要

 異彩を放つ書き出しだったのは南日本。NHK連続テレビ小説「虎に翼」で、1947年施行の日本国憲法を発表する新聞が登場するシーンを紹介した。「戦後復興の途上にあった日本人に新しい未来を予見させるものとして生まれてから77年が過ぎた。その力を近年、政府が軽んじる場面が頻発している」として、「立憲主義」にあらためて立ち返る時だと主張した。

 毎日は、中東と欧州で「二つの戦争」が続き、「日本国憲法の平和主義の理念が今、国際社会の現実によって脅かされている」と指摘。重要なのは人々の命や暮らしを脅威から守る「人間の安全保障」の視点であり、その理念を実際の行動に結び付ける外交力が問われていると訴えた。朝日は、「台湾有事」をにらんだ自衛隊の南西シフトが進む島民の思いを紹介。「政府は力一辺倒ではなく、外交を含む重層的な取り組みに全力を注ぐべきだ。平和国家の内実が今ほど問われる時はない」と結んだ。

 北海道は、岸田政権が敵基地攻撃能力の保有を認め、他国と共同開発する次期戦闘機の輸出解禁を決めるなど、憲法9条の空洞化が進んでいると指摘。「いつか来た道を歩んでいるかもしれないとの認識を持ち、権力を監視する必要がある」と訴えた。中日・東京は、プラトンの著書に出てくる「洞窟の比喩」を紹介。「私たちは囚人のように洞窟に閉じ込められ、政権が都合よく映し出した影絵を見ているのではないでしょうか」と問題提起した。

 岸田首相は自民党総裁任期である9月までに憲法改正を実現するとしてきた。「移り変わる社会情勢や価値観の変化に流されたなし崩し的な改変など、あってはならない」(神奈川)、「被爆地選出の首相はいま一度、平和主義の原点に立ち返るべきだ」(中国)、「今は現行憲法という手綱を国民が握り、先走る政権を制御すべき時」(西日本)などと、拙速な改憲論議に釘を刺す社説も多かった。

 その一方で、議論の活性化を促す主張も相次いだ。静岡は、フランスで女性の人工妊娠中絶の自由を世界で初めて憲法に明記する改憲案が可決され、アイルランドでは女性の「家庭での義務」を重視する憲法条項の修正案が国民投票で否決された動きを紹介。なぜ、日本で改憲論議が進まないのかを考える必要があると訴えた。

 元日の能登半島地震も踏まえ、北國は「軍事的脅威の高まりとともに、大災害の発生が続き、新たな備えが必要な課題が次々に浮上している」として、世界の国々と同様、日本でも憲法改正議論を進めるのは当然だと主張した。

 日経は、衆院憲法審査会で、緊急時に国会議員の任期延長を可能にする改正を急ぐべきとの声が強まっていることに触れ、「各党は議論の停滞を打破し、危機下での政府や国会の役割に関する考え方を有権者に示してもらいたい」と迫った。

 産経は「厳しい安全保障環境を踏まえれば、日本の国と国民を守るために憲法改正が今ほど必要なときはない」と主張。国会議員だけに任せず、内閣も専門機関を設けるよう首相に求めた。読売は、同社の世論調査で憲法改正への賛成者が63%に上ったと紹介。「悪化した安全保障環境を踏まえれば、9条についても踏み込んだ議論が欠かせない」とし、具体的な条文をまとめるよう政治に迫った。

 複数の地方紙が「国民の安全に重大な影響を及ぼす事態」が発生した時に、関係自治体に閣僚が必要な措置を指示できるとする地方自治法改正案への疑問を指摘した。京都は「『国民の命を守る』といった美名の下、あいまいな想定で自治体を自由に動かす権限を国に与えることは、中央集権の主従関係へと逆戻りさせかねない」と表明。山梨日日は「自治体行政への国の関与は必要最小限度とし自主性・自立性に配慮しなければならない」との地方自治法の意義をあらためて強調した。

人権尊重の理念確認を

 東奥、上毛、岐阜、山陰中央、佐賀などは、同性婚を認めない民法の規定を憲法違反とした3月の札幌高裁判決を挙げ「読み取れるのは、憲法の基本原理である『基本的人権の尊重』を実践しようという裁判官の強い意志だろう」「時代とともに社会は変化し、国際情勢も変わる。だが、憲法の基本理念の持つ意義は不変である」などと評価。基本理念を確認した上で、日本の針路を考えていくべきだと主張した。(審査室)

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