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2024年 7月9日
「カネで動く政治」刷新を 改正規正法成立

抜本改革見送り 自民に批判

 自民党派閥の裏金事件を受けた政治不信が深まる中、改正政治資金規正法が6月19日、通常国会で成立した。各紙が社説・論説で「政治とカネ」の問題点を指摘するとともに、規正法を実効性あるものにするための注文を突き付けてきたが、多くの課題が残される結果となった。解散して国民の信を問うべきだとの主張もみられた。

 規正法改正の大きな論点の一つは、企業・団体献金を禁止するかどうかだったが、「政治にはコストがかかる」と自民は譲らなかった。パーティー券購入者の公開基準額は「5万円超」に引き下げられたものの、不透明さを問題視される政策活動費は温存された。

企業献金「禁止すべき」

 徳島は「30年前の政治改革で、献金廃止を前提に政党交付金制度が作られた経緯を忘れたかのようだ」と批判し、北海道は「資金の多寡により政策がゆがめられることがあってはならない。献金は禁止すべきだ」と主張した。

 毎日は「そもそも問われているのは、カネの力で政治が動く現状をいかに変えるかである」と強調。神戸も「多様な人材の参画には『カネのかからない政治』の実現を目指すのが筋である。『カネで動く政治』のイメージを刷新しなければならない」と論陣を張った。愛媛は「自由な政治活動は国民の信頼があってこそ。『政治にカネがかかる』と言われても納得できまい。抜け道を探すのではなく『カネのかからない政治』に議員自ら取り組むべきだ」と記した。

 西日本は、企業・団体献金に理解を示す経団連の姿勢に対し「社会貢献と言いながら、特定の政党に多額の献金をすることが妥当なのか。利益を追求する企業が献金に何の見返りも求めていないと、株主に説明できるだろうか」と疑問を投げ掛けた。

 国会で論戦が続く中、政治資金規正法違反罪に問われている安倍派の会計責任者が法廷で、一時中止した裏金還流の再開について、派閥幹部だった4人の協議で決まったと述べた。高知は「幹部らのこれまでの説明に対して疑いの目を強めざるを得ない。うそをつくと偽証罪に問われる証人喚問への出席を求めることも、視野に入れるべきだ」と国会に求めた。福井も「4人の議員辞職にもつながりかねない事態であり、国会での証人喚問が不可欠だ」と訴えた。

 改正法は成立したものの、多くの注文が付いた。日経は「政治家の資金調達の手段を閉ざすだけでは活動が停滞し、資金力や知名度に勝る世襲議員らを有利にする面がある」として、政治資金の公費負担の再設計を検討するよう提案。産経は「外国人・外国法人のパーティー券購入規制を検討にとどめた点」を課題として挙げた。信濃毎日は「第三者委員会を設置し、改革案を練り上げることを求めたい」。読売も「政治資金は本来、政治活動を支える与野党共通の基盤のはずだ。政治資金を監視する第三者機関の設置など、積み残された課題について各党で早急に協議し、実効性のある結論を出す必要がある」と注文した。

 野党各党が強く反発する中で採決となったことについては、秋田魁が「重要な案件にもかかわらず、野党も含めた幅広い賛同がないままの採決となったのは、残念というほかない」と嘆いた。南日本も「信頼を失墜させた当の自民が数の力で押し切ってしまったのは禍根を残すだろう」とした。

 自民への批判はさらに強まった感がある。「首相と自民党が抜本改革に踏み込まなかったのは、裏金事件を反省していないからと断ぜざるを得ない」(中日・東京)、「改革が生煮えに終わったのは、自民の取り組みが決定的に遅かったことに、そもそもの原因がある。改革の範囲を極力絞りたいという思惑は明白」(朝日)。神奈川は岸田首相について「党首討論では野党からの衆院解散や退陣要求を拒否したが、政権運営はすでに行き詰まっている。求心力を失った首相に政策推進力はなく、トップの座にしがみつく姿勢は見苦しい」と評した。

解散の必要性指摘も

 批判は野党にも向かった。京都は「対峙すべき各野党は『多弱』から抜け出せず、今回も結束して改革を実現させる迫力を欠いた」と論評した。岩手日報は維新について、「衆院で自民と法案修正し、政策活動費の10年後の使途公開を盛り込ませた。そもそも『10年』に説得力がないところに、領収書の黒塗り公開などを防ぐ詰めを欠いたまま、法案に賛成した。参院で自民が旧文通費改革の先送りを図ると方針を一変させて反対に回ったが、後の祭りだった」。

 沖タイは「法を破った側が新たな法案を作り、数の力を背景に主張を押し通すというやり方も、世の中の常識からは乖離している。政治改革の名に値しない。解散して国民に信を問うべきだ」と、解散総選挙を求めた。(審査室)

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