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2024年 8月13日
平和の祭典 原点に戻る時 夏季五輪パリ大会

分断克服へ希望示す場に

 夏季五輪パリ大会が8月11日まで開かれた。近代五輪を創設したピエール・ド・クーベルタンの母国で100年ぶりに開催された同大会は、夏季五輪史上初めて開会式を競技場外で実施。選手やスタッフの男女比をほぼ同数とし、競技会場の95%は既存か仮設のものを活用するなど、持続可能な新たな五輪像を模索した。各紙は社説・論説で選手らにエールを送る一方、五輪の意義を問い直した。

 中国は「創始者クーベルタンは、五輪を平和運動に進化させることを夢見た。世界中から国や人種、宗教の違う若者が一堂に会し、競技を通して互いの理解と友情を育む。その原点に立ち返る機会に、彼の生誕の地で100年ぶりに開かれる大会がなることを願う」との期待を記した。中日・東京は、人々が五輪に引かれる理由について「国、人種、宗教の違いも超えて、互いを認め合う五輪本来の姿に、世界は一つになれるという理想を見るから」だとの見方を示した。

 3年前の東京五輪は新型コロナウイルス禍で無観客だった。神奈川は「戻ってきた日常の中でスポーツの祭典が華やかに開かれることを喜びたい」とし、熊本日日は「客席からの大声援は、選手の大きな力になるはずだ」と強調した。産経は、連覇を目指した阿部一二三、詩の両選手に送られた声援に言及。「兄妹のドラマも、大観衆の存在抜きには語れない」と論じた。

男女平等の推進評価

 史上初めて男女の出場枠が同数となったことについて、愛媛は「大きな成果だ」とした上で、「共同旗手の選任や指導者の3割を女性にすることも目指し、競技日程では女子マラソンを男子の翌日とするなど、慣習を打破し平等の精神を反映した。内外への波及が期待される」と評価。南日本も選手村に育児室が設けられたことを挙げ「子どもを持つアスリート支援への理解を深め、支援を後押しするきっかけになっていけば心強い」とした。静岡は、ジェンダー平等に注力してきた国際オリンピック委員会(IOC)が「歴史的な大会を実現させた」と指摘した。

 既存や仮設の施設を使用してコストを抑えたことについては、徳島が「市民意識を考慮した対応で評価できる」とし、京都も「持続可能性を重視する上で今後のモデルになりそうだ」と前向きに捉えた。

 開幕直前には、高速鉄道TGVの複数の路線で、設備が放火されるなど五輪の混乱を狙ったとみられる事件が起きた。日経は、重要インフラへの破壊行為を許したことについて「大規模大会での警備の難しさを浮き彫りにした」とし、選手が安心して競技できる環境の整備と、観客の不安払拭に向け「仏当局は万全を期してほしい」と注文を付けた。読売も「大会の成否は、安全な運営にかかっている。警備に万全を尽くしてほしい」と訴えた。

 北海道は、フランスの捜査当局が不正利得などの容疑で大会組織委員会を捜査していることに触れ、「東京大会では汚職事件と談合事件が起き、裁判が続いている。この反省が生かされていないとすれば極めて残念だ」と嘆いた。

戦火続く中の出場にエール

 多くの社が、ロシアのウクライナ侵攻、イスラエルによるパレスチナ自治区ガザへの攻撃が続く中での開催となったことに言及した。河北は「戦争の影響が色濃く反映されていることに失望を禁じ得ない」とした。IOCがロシアおよび同盟国ベラルーシと、イスラエルの参加を巡って異なる対応を取ったことについて、福島民友は「対応の基準を使い分けていると各国や地域に受け取られかねないものであり、残念だ」と記した。岩手日報も「ダブルスタンダードとの批判は免れない」と指摘した。

 秋田魁は、ウクライナやガザでそれぞれ数百人規模のスポーツ選手、コーチが死亡したことに触れ、「戦火に苦しむウクライナ、ガザの人々がいることを忘れるわけにはいかない」と強調した。沖タイは、ウクライナから140人、ガザからは8人が出場することに、「困難な状況にもかかわらず、希望を持ち参加した選手たちをたたえたい」とエールを送った。

 高知は五輪について「分断の克服へ希望を示せる場になるよう、関係者は努力を続けてほしい」と注文した。毎日も「アスリートが国境を超え、五輪の理想を体現する大会にしてほしい。それが分断の世を動かす平和のメッセージになるはずだ」と訴えた。

 西日本は「行き過ぎた商業主義や大会の肥大化はパリ大会で改善されるか」と問い掛けた。朝日は「多額の放映権料を負担する国外の放送局に配慮するあまり、十分な睡眠や休憩を確保できないような競技時間の設定が幅を利かせるようでは、社会の常識と乖離する」と選手中心の大会運営を求めた。(審査室)

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