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2024年 10月8日
課題山積 逃げず処方箋を 自民総裁選制し石破氏が首相に

「政治とカネ」 改革求める

 9月27日投開票の自民党総裁選挙で石破茂氏が勝利し、10月1日の臨時国会で第102代首相に選ばれた。政治資金不記載、いわゆる「裏金」問題を受けて、前任の岸田文雄首相は3年足らずで退陣した。総裁選には後継をめざして過去最多の9人が立候補。出馬への動きが始まった段階から各紙は社説で、自民党の改革や山積する内政・外交課題に対する姿勢を問うた。

論戦経ぬ解散に批判

 2日の社説は、新首相への注文が並んだ。日経は「党執行部と閣僚の顔ぶれからは挙党態勢の構築に苦心した形跡がうかがえる」と記した上で、経済や財政、安保・外交政策で「難題から逃げず処方箋を」と訴えた。産経は閣僚・党人事について、党内融和の観点から「必ずしも適材適所といえない」とした。

 石破氏は9月30日、衆議院を10月9日に解散して27日投開票で総選挙を実施する意向を表明した。首相就任から8日後の衆院解散は「戦後最短」(京都)となる。首相就任前の解散表明に、読売は「前代未聞」と驚きを隠さない。

 毎日は、早期解散への賛否が「主要な論点だった」総裁選で、石破氏が国民に判断材料を提供した後の解散論を示していたことを指摘し、「党利党略を優先してひょう変したと言わざるを得ない」と批判。日刊工業は、党内基盤が弱い石破氏が、新内閣支持率がまだ高いと見込まれるうちに解散・総選挙に踏み切るのは短期決戦狙いと分析した上で「論戦に踏み込まない自民党の姿勢が、むしろマイナスに作用しないか」との見方を示した。

 「刷新感」「ご祝儀相場」があるうちに乗り切ろうとする戦略であれば「国民を甘く見ている」(下野、山梨日日など)との不信を招きかねない。「それが適切かどうかを判断するのは一人一人の有権者」(山形)なのは言うまでもない。

 自民党総裁選は、最終的に立候補を見送った議員を含めて10人超が名乗りをあげる「党の歴史でも異例の事態」(八重山毎日)の中で始まった。「麻生派以外の派閥が解散方針を決めた影響」(京都)が大きい。8月中旬に岸田前首相が不出馬を表明して以降、立候補表明や政策発表が加速。静岡は、こうした動きにより「低迷していた岸田文雄内閣や自民の支持率はやや上向いた」ものの、国民の信頼が回復したわけでも政治資金問題のけじめがついたわけでもなく、岸田政権下で成立した改正政治資金規正法は「抜け穴だらけ」と釘を刺した。

 北海道は、野党が求めた政策活動費の廃止を自民党が拒否しながら、総裁選に向け廃止を主張する候補が現れたことに「なぜ当時そう主張し、党内をまとめられなかったのか」と説明責任を問うた。

 立候補した9人は総裁選初挑戦が5人。40代が2人。女性も2人。「閣僚や党幹部を歴任したベテランから中堅まで、多士済々ともいえる」(朝日)顔ぶれとなった。福島民友は「選挙の顔ではなく、この国のかじ取りを担うに最もふさわしい人物を選ぶ必要がある」と、自民の国会議員と党員に対し「重責を自覚」してほしいと呼び掛けた。

 27日の第1回投票では、高市早苗氏が議員票、地方票ともに石破氏を上回ったが、決選投票で逆転された。毎日は「中国への強硬姿勢を示し保守的な主張を掲げる高市氏」と比べ石破氏の「経験や安定感」が重視されたと分析した。

 旧岸田派が石破氏への、麻生派が高市氏への投票を呼び掛け「派閥が一定の存在感を示した」(読売)のも事実だ。東奥、茨城、岐阜などは「派閥解消が見せかけだったと批判されても仕方あるまい」と、「脱派閥」を今後の行動で証明する必要があると念押しした。

 石破氏の総裁選挑戦は5度目。北國が指摘するように、世論人気は高かったが、離党歴などから「裏切り者」の声もあり、求心力の確保が課題だ。同紙は、総裁選で小泉進次郎氏が失速し、石破氏が勢いを得たのは、弁が立つ野田佳彦立憲民主党代表への対抗を期待されたことが一因と推測する。「政治とカネ」の問題を含めて改革を実行するよう石破氏に求めた。

地方に目を向けた政治期待

 石破氏は初代の地方創生相を務め、退任後も全国行脚などで地方重視を訴えてきた。石破氏の地元である鳥取県の日本海は「地方に目を向けた政治を」と期待する。

 在日米軍基地が多い沖縄県の沖タイ、琉球は、石破氏が公約した日米地位協定の改定を促した。安全保障では、石破氏はアジア版NATO創設などを掲げた。これには、歴史的にも地理的にも多様なアジア諸国が「望んでいるとも思えない」(朝日)と指摘された。対中抑止を重視してきた各紙も慎重な対応や撤回を求めた。(審査室)

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