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2025年 1月14日
戦後80年 民主主義再建へ 在京6紙の新年号紙面

能登地震 復興の歩みも焦点

 能登半島地震から1年がたち、復興の遅れが目立つ。国会は自民、公明両党が衆院で過半数に届かない「宙づり」の状況となり、先行きは見通せない。世界に目を向けると、ロシアのウクライナ侵攻は2年以上、イスラエルによる戦火も1年以上続く。米国のトランプ政権再登場、韓国の政情不安に加え、各国で物価高やSNSの浸透を背景に民主主義の後退が指摘されている。在京6紙の元日付1面トップは、朝日と東京が能登半島地震から1年を取り上げた。読売と産経は独自ニュース、毎日と日経は企画を展開した。社説・論説は、戦後80年を迎え、民主主義の重要さを訴える内容が多かった。

独自ニュースは2紙

 【1面トップ】日経「逆転の世界 備えよ 日本」=米国は「民主主義と自由競争、そして資本主義のダイナミズムで世界の覇権国になった」が、今や「人々の不満は高まり、米国の強さの源泉であった寛容さは失われつつある」と指摘し、「逆転の世界」の縮図だと位置づける。2025年は「予測不能の時代が始まる」とし、「日本に必要な備えは、あらゆる危機に対応できる財政やエネルギー、金融市場の余力にある。少数与党で政策が停滞することは許されない」と指摘する。

 毎日「デジタルで問う『真の民意』 デモクラシーズ これまで これから 戦後80年」=民主主義を考える企画をスタートさせた。1回目は「私たちの声が政治に届いていない」との問題意識から、最新のデジタル技術を生かして民主主義を「アップデート」しようとする取り組みを描いた。横浜市のスタートアップ企業は熊本県益城町で住民の声を直接政策に取り入れる直接民主主義の試みに乗り出している。町の担当者は「住民意見をくみ取る間口が広がる」と評価する。

 読売「中国 宮古海峡で封鎖演習 台湾有事想定か 政府警戒」=中国海軍と海警局が2024年12月、沖縄本島と宮古島間の宮古海峡などで海上封鎖と似た活動を行ったほか、重武装をした海警船団を沖縄県・尖閣諸島周辺に派遣していたと報じた。政府は、中国側が台湾有事の際に海上封鎖の範囲を拡大させることも選択肢の一つとしているとみて、警戒している。

 朝日「つながり 耕す 能登と一緒に」=石川県輪島市のレストランだったかやぶき屋根の古民家は地震後、ボランティアを受け入れる拠点となった。1年間で延べ3432人が集まり、継続的に地域と関わる「関係人口」を生み出す場となっている。管理者は「地域の人と外から来た人が一緒につくる、一つのムラになっていけばいい」との期待を寄せる。

 東京「能登半島地震1年 招待状『おとう』へ届け」=地震で亡くなった石川県輪島市の輪島塗蒔絵(まきえ)師の松井健さん(当時55歳)に向け、長女の谷内未来(みく)さん(27)が手紙を書いた。つづったのは、今年5月に迎える自身の結婚式の招待状だった。「おとうに会いたいなぁていつも涙が出ます。でもそんなみく見て『なに泣いとるげ。おとうなら大丈夫やわい!』ってきっと言っとるよね。でもやっぱりさみしいから涙は出てしまうよ」と父への思いを打ち明けた。

 産経「別姓 小中生の半数反対 『自分はしない』6割」=選択的夫婦別姓制度の導入について、全国の小学4年生以上の小中学生を対象に調査を実施した。中学生約1800人、小学生約150人から回答を得た。夫婦別姓により両親やきょうだいと違う名字になることの是非を問うと、「反対」49.4%、「賛成」16.4%、「親が決めたのなら仕方がないので賛成」18.8%、「よくわからない」15.4%で、反対がほぼ半数を占め、積極的な賛成は少なかった。

混迷する世界 外交姿勢論じる

 【社説・論説】毎日「戦後80年 混迷する世界と日本 『人道第一』の秩序構築を」=「強者が弱者を力でねじ伏せる『ジャングルの掟(おきて)』の時代に、時計の針を巻き戻してはならない」と訴える。「米国第一主義」を唱えるトランプ次期大統領、欧州と中東で続く「二つの戦争」を止められずにいる国連、その国連憲章を踏みにじったロシアを挙げた上で「日本に求められているのは、『自国第一』が幅を利かせる世界を『人道第一』へと軌道修正する外交努力である」と指摘した。

 朝日「不確実さ増す時代に 政治を凝視し 強い社会築く」=「政官まかせにしてはいけない」として民衆に政治参加を求めた19世紀の米国の詩人、ホイットマンにならって凝視したいものが二つあるとする。一つは「トランプ氏を(大統領に)選んだ米国の民意に正面から向き合い」「不信・不満の根源を見極める必要がある」こと。もう一つは日本の政治で「一見して不安定にみえる少数与党が、日本を変える好機ともなりうる」ことだと指摘する。「有権者の側が変調や逸脱から目をそらさない。しっかりと声を上げる。強靱(きょうじん)な日本の社会を築く。そんな年にしたい」と論じた。

 読売「平和と民主主義を立て直す時 協調の理念掲げ日本が先頭に」=ロシアやイスラエルの戦火、韓国政情の混乱、米国のトランプ政権再登場を挙げ、「世界の平和と繁栄を支えてきた国際秩序は、いまや風前の灯(ともしび)のようにみえる」と俯瞰(ふかん)する。その上で「自国だけで完結できる生活や経済はない」「自国第一をめざすにしても、他国との協調が必要なのだ」と説き、日本にとって「人類共通の理念、そして節度ある国民レベルの行動の積み重ねが、不可欠の資質となる」と主張した。

 東京「あわてない、あわてない 年のはじめに考える」=「一番、怖いのは、やはり戦争」だとし、「戦後」を続けていくためには民主主義の政治体制が重要だとの見方を示した。気掛かりな点として「民主主義の意思決定は複雑で時間がかかるが、人間というものは生来、せっかちにできている」ことを挙げた。タイムパフォーマンス(タイパ)を求めるなら、「一番は独裁制でしょうね」と問い掛ける。その上で、テレビアニメ「一休さん」の決まり文句である「あわてない、あわてない」が「タイパの魔を振り払うのには、絶好の呪文かもしれません」と語り掛けた。

 産経「年のはじめに 未来と過去を守る日本に」=「抑止力の構築を急がないと、日本は数年内に、戦後初めて戦争を仕掛けられる恐れがある」と主張する。しかし、「最近の日本の政治が危機感を十分共有しているとは思えない」と警告。その上で、トランプ氏との会談に言及し「石破首相は、日本と国際秩序を能動的に守る姿勢を示してほしい」と求めた。

 日経「変革に挑み次世代に希望つなごう」=大半の民主主義国家で政権与党が退潮し、各国政治の混乱が世界経済の主要なリスクになりつつある国際情勢を見渡し、「ピンチをチャンスにいかに変えるかという、しなやかな発想と知恵こそが問われている」と唱える。「ひずみの目立つ税制や社会保障を超党派で腰を据えて議論し、改革することが急務となる」と指摘。その上で「人工知能(AI)や半導体など将来に通じる技術を生かし、競争力を磨いてほしい」と期待した。

 【主な連載企画】1面トップで始まった毎日「デモクラシーズ」、日経「逆転の世界」のほか、以下など。朝日=国際面「一皿から見える世界」、くらし面「大相続時代 不動産の行き先」、毎日=社会面「半歩そっと 能登地震1年」(12月31日から)、読売=1面「AI近未来」(1月3日1面トップから)、スポーツ面「つなげる 街とスポーツ」、東京=暮らし面「ここに昭和 100年目の風景」、特報面「あしたの轍(わだち)」、産経=2・社会面「備えあれ 阪神大震災30年・能登地震1年」

 【元日号ページ数(かっこ内の数字は2024、23)の順】朝日90(88、86)▽毎日56(60、64) ▽読売88(88、86)▽日経88(92、92) ▽東京40(42、46)▽産経60(64、68)(審査室)

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