新聞大会会長あいさつ

第69回新聞大会 新聞協会長あいさつ

2016年10月18日 山形市
一般社団法人日本新聞協会 会長 白石 興二郞

 新聞大会を山形市で初めて開催します。地元・山形新聞社は今年、創刊140周年を迎えました。明治9年の創刊以来、県民とともに歩み、郷土の発展に寄与してこられたことに深く敬意を表します。貴重な節目に新聞大会を開催することになり、山形新聞社の寒河江浩二(さがえ・ひろじ)社長はじめ皆さまには、たいへんなお力添えをいただきました。心からお礼申し上げます。

 新聞大会は、各社の幹部が一堂に会し、新聞や報道の諸課題について議論する貴重な機会です。研究座談会では、活発な議論を交わし、実りある大会にしたいと考えています。日本の長引く景気停滞は、国民の節約志向に拍車をかけ、企業の投資にも影響を与えています。その影響は新聞界にも及んでおり、発行部数の減少になかなか歯止めがかからず、広告収入が減少するなど、経営環境は一段と厳しさを増しています。一方で、国際社会や日本経済の先行きが不透明な中、確かな報道で道筋を示す新聞の役割は、ますます重要になっています。

 民主主義社会に不可欠な新聞を守るため、新聞界は30年にわたり、新聞購読料への軽減税率適用を求めてきました。それが結実し、軽減税率が定期購読の新聞に適用される法律が成立しました。この税制上の措置は、正確で多様な情報を容易に入手できるよう読者の負担を軽減するとともに、新聞の公共的な役割を制度的に位置付けたものと理解しています。今後もこれまで以上に、民主主義や文化の発展に尽くし、公共財にふさわしい役割を果たさなければなりません。

 新聞の役割に対する読者の理解を得るためには、販売改革の実現が不可欠となります。内閣府消費者委員会における特定商取引法、消費者契約法の見直し論議では、新聞経営の基軸である訪問販売、電話勧誘販売に関する規制強化を求める声が上がりましたが、法律による勧誘規制は見送られました。新聞を販売する健全な事業者が法規制の対象とならないよう、新聞公正競争規約の順守を一層徹底し、消費者・読者からの苦情・相談を減らす努力を続けることが重要です。

 新聞がその責務を全うするためには自由な言論空間が必要であり、活発な報道を制限する動きには迅速に対応していきます。個人情報保護法は昨年大幅に改正され、来年春に施行されますが、同法が全面施行されてから、行政や捜査機関のみならず、民間事業者や個人にいたるまで、個人情報保護を名目に情報提供を拒む傾向が広がっています。社会の匿名化が広がらないよう同法を抜本的に見直し、報道機関への情報提供が法規制の対象外であると周知するよう求めてまいります。

 新聞経営に関しては、無購読者対策が各社共通の課題となっています。新聞を読んだことのない人が増える一方で、新聞界にとって追い風もあります。今年から選挙権年齢が18歳以上に引き下げられ、主権者教育への関心が高まりました。新聞はその最適な学習材で、複数紙を読むことで多様な言論の存在や、他者の意見を尊重する大切さを理解できます。大学生や若手社会人に対するNIB(Newspaper in Business)の活動も各社に定着してきています。学生や若い社会人が新聞を手にする機会を作るため、これからも緊密に連携していかなければなりません。

 ニュースパーク(日本新聞博物館)は今年7月、体験型展示を取り入れて展示内容を一新、楽しく学べる施設に生まれ変わりました。さまざまな情報であふれる現代社会において、確かな情報を届けている新聞の役割を子どもたちや若い世代に伝え、活字文化を次代に継承していきたいと考えています。

 新聞広告の可能性にも触れたいと思います。今年の新聞広告賞の受賞作品を見ると、ニュース媒体である新聞ならではの広告展開に加え、全社挙げてのプロジェクト展開といった新たな流れ、新しい印刷技術の活用、他メディアとの連携など新聞広告の可能性は広がりを見せています。新聞界が一致して成功事例をPRし、その魅力を広告主や広告会社に訴求していく必要があります。

 東日本大震災から5年を迎えた今年、熊本では震度7を観測する地震が起きました。厳しい状況の中、九州の報道各社は懸命に取材を続け、正確な情報を届けました。その結果、新聞に載っている情報は確かだと、新聞は避難者に競って読まれたのです。災害対策特別委員会は、熊本地震が新聞発行に与えた影響や教訓、有効だった事前対策などを報告書にまとめました。いかなる時でも加盟各紙が読者に公正な情報を迅速に届けられるよう、新聞協会は情報を提供し支援してまいります。

 新聞界はさまざまな課題を抱えていますが、民主主義社会を支える役割と新聞人としての自覚を忘れず、この難局を一致して乗り越えていきたいと思います。この大会を通じ、皆様と率直な意見交換ができることを期待いたします。

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